eコラム「北斗七星」
- 2016.05.16
- 情勢/社会
公明新聞:2016年5月14日(土)付
「送料無料」。インターネット通販などでは、おなじみの表示ではある。対象購入額に少し足りないとなると、お目当てではない商品をつい買ってみたり◆もちろん、輸送コストがゼロでないのは百も承知とはいえ、ある取材で懇談したトラック運送業の関係者は、そうした状況に眉をひそめた。「どんなに優れた商品も、消費者に届けてこそ価値を生む。物流の果たす役割が、過小評価されはしまいか」と◆先日、講演した石井啓一国土交通相(公明党)は、安定した物流システムの構築が今後の経済活性化に不可欠との見方を示した上で、「トラックは、荷台の半分を"空"の状態で走り、走行時間の約4割を渋滞待ちに費やしているのが現状」と指摘。輸送効率の向上に力を注ぐ考えを強調した◆物流の変革が、新たな価値を生む事例もある。昨年、羽田空港内にお目見えした魚市場では、全国各地から鮮魚を空輸。これまでは鮮度保持が難しく、販売ルートに乗りにくかった魚種にも高値が付くと聞く◆青函トンネル内を走る在来線貨物列車では、新幹線型コンテナ車の導入を検討中。スピードアップが実現すれば、今は輸送期間を見越して早めに収穫している農作物も長く成熟させられる。地域産品のブランド力を高めるためにも、物流が担う役割は大きい。(武)