eコラム「北斗七星」

  • 2016.05.18
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年5月18日(水)付



国のハンセン病隔離政策を憲法違反と断じた熊本地裁の判決から5月11日で15年がたった。1931年成立の旧「らい予防法」によって患者の強制隔離が法制化。40年代に特効薬が開発され、治癒可能になっていたのに53年の新法でも変わることなく、96年の法廃止まで患者や家族を苦しめ続けた◆深く傷つけられた名誉の回復は、2001年の違憲判決に続く、政府の控訴断念と首相の謝罪、そして衆参両院での国会決議でようやく緒についた。控訴断念に至る過程での坂口力・厚労相(当時=公明党)の奮闘は、今も記憶に新しい◆5月2日、最高裁の寺田逸郎長官が記者会見で、ハンセン病患者の裁判を事実上、隔離された「特別法廷」で開いていた問題について初めて公式に謝罪した。1948年~72年に療養所や、刑務所、拘置所などで95件行われた裁判だ◆災害によって裁判所が使用できない場合を想定した規定を、違法に拡大解釈したと認め、長官は「差別の助長につながる姿勢があったことは痛恨の出来事だ」と述べた。行政、立法、司法の三権が、差別に覆われていたことを認めたことになる◆ある新聞のコラムは、この謝罪を受けて「次はマスコミの番だと考える」と深い自戒の念を表した。その時その時の「当たり前」に流されてはならない。改めて、そう思う。(繁)

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