eコラム「北斗七星」
- 2016.05.19
- 情勢/社会
公明新聞:2016年5月19日(木)付
「長寿」と聞けば、日本を想起する人も多いだろう。厚生労働省によると、日本人の平均寿命は女性が86.83歳で世界1位。男性は80.50歳で3位だった◆ところが、長いのは寿命だけではない。日本は世界屈指の"長寿企業の国"でもあるらしい。世界の創業200年以上の企業数は日本が3937社と断トツ1位。2位がドイツの1850社、3位が英国の467社と続く。後藤俊夫・日本経済大教授の2012年調査で知った◆ちなみに現存する世界最古の企業は建設会社の金剛組(大阪市)。578年創業だ。それにしても、なぜ長寿企業が多いのか。かつて「ゴホン!といえば~」のCMで一世を風靡した龍角散は同郷のよしみもあり興味深い。龍角散は江戸期、秋田の佐竹氏の藩医・藤井玄淵が創製した薬だ◆市販を始めた同社は1995年、経営危機に陥る。この現状に、新任のトップが決断した方針は「顧客の生の声を集めて、トップが直接触れる」「小さなチームで挑戦を始める」「社会的役割から市場を考える」の三つだったという(『東洋経済』鈴木博毅氏寄稿)◆トップ自ら介護現場に赴き、服薬補助ゼリーを製品化。幼児用も開発し、売上高は倍増した。今夏には生産量を2倍にする。現場に軸足を置いた対応力が勝ち抜くカギなのか。「現場主義」には限りない力が秘められている。(田)