e福祉避難所のケア体制

  • 2016.05.23
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年5月23日(月)付



スタッフ確保へ支援強化急げ



災害時には、体の不自由な高齢者や障がい者、妊産婦といった「災害弱者」に対して、特別な配慮が求められる。だが、熊本地震では、そうした人たちを優先的に受け入れる福祉避難所の機能が、スタッフ不足などを理由に十分に発揮されていない。

福祉避難所は、自治体が災害救助法に基づき、福祉施設や公共施設などを指定する。国の指針では、紙おむつや医薬品などを備蓄することが望ましいとされ、手すりやスロープなどバリアフリー環境も整備されている。2014年10月現在、全国では7647カ所が指定され、熊本市も176カ所、約1700人分の受け入れを計画していた。ところが、今月22日時点で開設できたのは73カ所だけで、利用者は341人にすぎない。

施設が損傷するなど理由はいくつもあるが、とりわけ大きいのは、スタッフの数が追いついていないことだ。例えば、老人ホームが福祉避難所となった場合、職員は元から施設を利用していた人に加え、避難者のケアにも追われる。人手不足に陥るのは、どうしても避けられない。

被災した自治体は現在、災害弱者の受け入れ可能な福祉避難所を少しでも増やそうと、スタッフの確保に全力を挙げている。その取り組みを促すために、例えば、看護師や介護福祉士などの資格を持ちながら、現在その職に就いていない潜在有資格者に協力してもらうことはできないだろうか。その上で、被災地外からのスタッフの派遣態勢を強化することも一案であろう。

もちろん、資格のない人でも、できることはたくさんある。傾聴ボランティアなど避難者に寄り添ってくれる人は、必要とされているからだ。

さらに重要な視点は、本当に困っている災害弱者ほど孤立しがちで、声を上げにくいということだ。福祉避難所の存在自体を知らない人も多い。周知徹底は必要不可欠であり、政府は自治体やボランティア団体などと連携して、力を入れるべきであろう。

公明党も、国会質問で政府にきめ細かな対応を求め、地方議員らと一緒に実態調査などに奔走している。1人でも多くの災害弱者が十分なケアを受けられるよう、自治体への支援が急がれる。

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