e全国初の津波避難シェルター
- 2016.06.03
- 生活/生活情報
公明新聞:2016年6月3日(金)付
山腹に横穴 70人収容
高知・室戸市
南海トラフ地震に備えて高知県が、室戸市佐喜浜町都呂地区に整備を進めてきた全国初の「津波避難シェルター」が7月末にも完成する運びとなった。同施設について県議会で提案してきた公明党の西森雅和県議と堺喜久美・室戸市議が、このほど現地を視察した。
高齢化進む海岸沿いの地域に 7月末に完成予定
公明の提案で県が整備
都呂地区は、太平洋沿いを走る国道55号と急峻な山に挟まれた細長い地域に住宅が密集している。県の想定によると、地震発生から約16分で避難が困難になる30センチの浸水が始まり、津波は最大5~10メートルに達すると予想されている。同地区の住民は高齢化率も40%以上と高いため、山を登る急こう配の避難路やタワーに代わる避難手段の確保が必要だった。
県議会では2011年6月定例会で西森県議が、高台や避難場所のない地域の津波対策について、津波の高さに影響されない避難シェルターの整備を提案し、その有効性や研究・技術開発の必要性などを訴えていた。県はこれを受けて、12年4月から技術的な検討を進めてきたが、高齢者の多い同地区では避難時の体力的負担が少ないシェルターが有効だと判断し、整備されることになった。
整備中のシェルターは、山腹に奥行き約30メートルの横穴(幅3メートル、高さ3.5メートル)を掘り、入り口には浸水を防ぐ二重の止水扉を設置。横穴の最奥部には、高さ23メートルの縦穴を抜いたらせん階段があり、山上に出ることができる。照明やベンチを備えた内部には、約70人の収容が可能で、津波対策としての地下シェルター型避難施設は、全国初だという。
完成間近の同施設は、暫定的に使用することも可能で、3月下旬には地域住民への説明を兼ねた見学会も行われた。参加した谷口愛子さん(80)は「中は思ったよりも天井が高くて、圧迫感をあまり感じない」と感想を。地域で自主防災組織のリーダーを務める竹島力さんは「完成後に住民の避難訓練を実施したい」と語っていた。
シェルターには、入り口の脇に階段やスロープを設置し、山へ登れる避難路も再整備する計画になっている。室戸市防災対策課では「施設の完成を受けて、地域住民が万全に避難できる態勢づくりを進めていきたい」(西村城人課長)と話していた。