e老朽団地の建て替え 法改正をにぎわい復活の一歩に

  • 2016.06.06
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年6月4日(土)付



建物の老朽化や居住者の高齢化に直面する団地にとって、再生への第一歩にしたい。

先の通常国会で、老朽化する団地や大型マンションの再生を進めるため、住民に建て替えに向けた合意形成を促す改正都市再生特別措置法が成立した。

これにより、市区町村が認めた市街地再開発事業として団地全体を再開発する場合、建て替えに必要な合意要件が、所有者全員から3分の2以上に緩和された。

建て替えで戸数が増えれば、新たな住民を迎えられるだけでなく、敷地を有効活用できるため、介護施設や保育所、商業施設などの誘致が可能となり、団地を中心とした街の活性化も期待できる。

国土交通省の昨年の調査によると、全国に約5000カ所ある団地のうち、建て替え検討の目安とされる築25年以上の団地は、約2800カ所と半数を超える。また、1981年以前の旧耐震基準で建てられた団地は約1600カ所で、全体の約3割を占めている。

ところが、建て替えが済んだ団地は累計で114カ所にとどまっている。住民全員の合意が必要という要件が高いハードルとなっていたためであり、対策が急がれていた。

今回の法改正による要件緩和で、建て替えの促進を期待したいが、課題も残っている。団地再生の核となる管理組合や自治会などについては、担い手不足で活動が低調なケースが目立つ。建て替えに向けた議論を始めても意見集約や資金面で難航することが予想される。

また、「ついのすみか」として長年暮らしてきた高齢世帯の中には、建て替えへの動きに戸惑い、不安を抱く人も少なくないだろう。建て替えに際しては、こうした住民への配慮が欠かせない。

このため、再生に苦慮する団地には、自治体が専門家を派遣するなどの支援策も必要ではないか。

住民や大学、商工会議所、自治体などが協議会を設置し、再生に向けて議論している地域もある。産学官一体で知恵を出し合う取り組みも重要だろう。

政府は、老朽化団地住宅への対策を引き続き検討してほしい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ