eコラム「北斗七星」

  • 2016.06.07
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年6月7日(火)付



ファンならずとも、今も興奮冷めやらぬ人がいるだろう。第74期将棋名人戦七番勝負。挑戦者・佐藤天彦棋士が4勝1敗で、羽生善治名人を破ったからだ◆名人は最も伝統あるタイトル。相手の羽生は20年前、25歳で王将位を獲得し、名人、竜王、棋聖などと合わせ、将棋界初の7冠を独占した「絶対王者」だ。今回も、敗れるまで4冠を持っていた。その羽生を、28歳の佐藤が圧倒したのだから、無理もない◆将棋界の隆盛を築いた大棋士・大山康晴の孫弟子に当たる佐藤。プロ棋士養成機関の「関西奨励会」に所属し腕を磨いてきた。「しぶとい将棋」(毎日)とは師匠・中田功七段の評だが、「逆転勝ちが一番多い棋士」と称された大山に一脈通じよう◆不利な状況を覆すには地力に加え、相手を見る力が必要になる。「大山先生は盤面よりも駒の動きよりも、相手の心の内を読み、自分の思う方へと追い込む力に長けていた」。間近で見て感動した羽生が自著『直感力』(PHP新書)で記している◆一方で、大山は将棋盤を離れると、やることなすことが早かったらしい。5分も時間があれば色紙を書く。声を掛ける。ファンに指導対局もした。佐藤は先輩に近づけるよう挑みたいと言う。自公政権が進めてきた経済政策は成果を上げつつあるも、道半ば。勝機は一人のための行動と眼力から生まれるのだ。(田)

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