e訪日客を地方に呼び込む契機に
- 2016.06.08
- 情勢/国際
公明新聞:2016年6月8日(水)付
訪日客の旺盛な消費需要を地方に波及させるため、地域の食文化を海外にアピールする「食と農の景勝地」の取り組みを進めていきたい。
農林水産省が今年度から始める同事業は、自治体や農協、観光業者らが、郷土食や地酒などを、農村風景や歴史、祭りなどの地域文化と結び付け、一つの「物語」として海外に発信し、ビジット・ジャパン・キャンペーンなど政府の公式なPRでも訴えていくものだ。
例えば、ブドウ畑やワインの醸造所を巡る旅は、国籍を問わず旅行者の人気が高く、国内外で重要な観光資源となっている。同様に、日本酒にまつわる文化に関心を持つ外国人は多いとされ、国内酒造メーカーが公開する資料館の中には来場者の約3割を外国人が占める所もあるという。
訪日客の間では、家電製品の購買といった「消費型」の需要だけでなく、日本らしさに触れる「体験型」の旅行が根強い人気を保っている。日本人の主食である米を原料とする酒を味わいながら、江戸時代から伝わる職人の作法や醸造技術に触れ、歴史的な街並みや田園風景を楽しむ旅は旅行者の心を捉えている。
魅力ある食材や文化は国内各地に存在する。ただ、それを外国人の来訪につなげられるかどうかは、発信の仕方に大きく影響される。訪日客の多くは必ずしも日本に関する豊富な知識を持ってはいないからだ。現状では、海外メディアの報道やガイドブック、著名な仲介者に紹介された食材や観光地に需要が集中しているのも事実である。
外国人旅行者の訪問先は現在、東京―大阪間の主要都市を訪れる、いわゆるゴールデンルートに偏っているが、地方が持つ本来の魅力を発信する景勝地事業は、旅行者の新たな流れをつくるきっかけになるのではないか。
公明党は、5月にまとめた提言「成長戦略2016 重点項目」の中で「食と農の景勝地」の認定を進めていくよう訴え、食文化と観光の連携強化を主張した。事業の応募期間は今月1日から7月29日までで、第1弾は11月をめどに認定される見通しだ。各地の自治体には、地域に活力をもたらす積極的な提案を促したい。