e「食品ロス」減らす食育
- 2016.06.17
- 生活/生活情報
公明新聞:2016年6月17日(金)付
長野・松本市
今月は「食育月間」。まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」の年間発生量は約632万トンにも上り、深刻な社会問題となっている。その半分近くを占める家庭からの廃棄を減らそうと、公明党は食品ロス削減を意識した食育・環境教育の全国的な展開をめざしている。そうした教育に先駆的に取り組む長野県松本市の現場を訪ねた。
園児を対象に出前授業
「みんなのおうちから出るごみ。実は半分くらい、ごみじゃないのに捨てられちゃっているものがあります。リサイクルできる紙やお菓子の袋。ほかには何があるかな? ......それは、食べ物」
「えっー!」
「もったいないよね」
長野県松本市、渕東保育園で行われた環境教育の一コマ。同市環境政策課の職員が、写真やイラストを使いながら食べ物がムダに捨てられている現状を伝えると、「にじ組」の園児たちは目を丸くして驚いた。
この日、市職員が教えたのは、資源リサイクルや食べ物の大切さ。説明や体操を織り交ぜ、約40分。終わりに市職員が「みんなも残さず食べるよね?」と問い掛けると、園児たちは元気よく「はーい!」と声をそろえ、学習内容をよく理解できた様子だった。
同園では、日常的にも給食や保育カリキュラムの中で食育を実践している。北野小春園長は「命を頂くことへの感謝の気持ちや、しっかり食べて元気に過ごす知恵を、特に幼児期に教えることが重要だと思っている」と食育・環境教育の意義を強調していた。
食べ残し3割減、家庭に波及効果も
同市の環境教育は、市内全ての公立保育園・幼稚園46園の年長児を対象に出前授業形式で実施。食べ物を含む学校や家庭ごみの減量を目的に、2012年度から続けてきた。13年に市が行ったアンケートでは、園児だけでなく子どもから話を聞いた保護者にも意識の変化が見られ、環境政策課は「環境教育の効果は予想以上に大きい」と話す。
同市は小学校にも取り組みを広げようと、昨年度、食品ロスを意識した食育・環境教育の実施をめざす環境省の学校給食モデル事業に応募。小学校で環境教育を行い、効果を検証した。
このうち日本の食料自給率や世界の食料不足の実情を教えた学校では、食べ残し量が最大で34%減少。「食べ物に感謝の気持ちがわいた」「食べ残さないよう家族で話し合っている」と反応も上々で、この結果を受け、今年度から最も効果が高かった3年生を対象に市内全小学校で環境教育を行う。
同市はさらに、「残さず食べよう! 30.10運動」と銘打ち、毎月30日を"冷蔵庫クリーンアップデー"、10日を"もったいないクッキングデー"に設定し、家庭での実践も呼び掛ける。市環境政策課は「廃棄物の発生やコストを抑制するリデュースは優先順位が高い」として、今後も市を挙げて食品ロス削減運動を進めていく考えだ。
国も全国で実施めざす
環境省は、松本市などで実施した学校給食モデル事業を今年度も継続する。
昨年、同省は市区町村を対象に、学校給食で発生した食べ残しや調理くずなど食品廃棄物に関する全国規模の調査を初めて実施。「食べ残しの削減を目的とした食育・環境教育を行っている」と答えた自治体は約65%に上ったが、児童・生徒1人当たりの食べ残し量が年間約7.1キログラムに達することも明らかになった。こうしたことから、同省はモデル事業の取り組みを発信しながら、他の自治体にも環境教育の実施・充実を促している。
一方、今年4月から5年間の食育推進の目標や施策を定めた政府の「第3次食育推進基本計画」でも、食品ロスの削減が重点課題の一つに掲げられた。各自治体に対して、食育推進計画の策定を促しており、各地域での積極的な取り組みが期待される。
公明 活発に政策提言
公明党は、食品ロス削減推進プロジェクトチームを昨年12月に設置。座長を務める竹谷とし子参院議員(参院選予定候補=東京選挙区)を中心に、先進事例の視察など調査活動を重ねてきた。
5月18日には、首相官邸で菅義偉官房長官に対し、「食品ロス」ゼロをめざし、国を挙げて取り組むことを求める提言を申し入れ。法整備や商慣習の見直しと併せ、家庭への普及啓発や、食育・環境教育の充実を訴えた。
党の参院選重点政策でも「消費者への食育・環境教育などの国民運動を抜本的に強化します」と明記。x各地方議会とともに、食品ロス削減に向けた取り組みを力強く進めている。