e無責任な民進、共産など野党の共通政策
- 2016.06.21
- 情勢/解説
公明新聞:2016年6月21日(火)付
選挙目当ての"野合"は明白
民進、共産などの野党4党は、今回の参院選で「共通政策」なるものを掲げ、共闘姿勢のアピールに躍起になっている。だが、政権獲得後の「国民連合政府」を提案する共産党に対し、民進党にはその意向がないなど、政権構想や基本政策の違いは大きい。公明党の山口那津男代表は「選挙後の責任ある姿が見えないのに、選挙時だけ協力する。これでは、選挙後に混乱するのは明らかだ」と喝破している。共通政策をめぐる野党の主張の矛盾を検証する。
「安保法制の廃止」のみ一致。自衛隊、防衛政策の違い鮮明
野党4党は、平和安全法制(共通政策では「安保法制」と表記)を廃止し、「集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回する」よう求めている。
この点、疑念が湧いてくるのが、民進党と共産党の安保政策に対するスタンスの違いだ。党内に保守系議員も多い民進党は、自らの公約(重点政策)で、自衛隊の任務や日米間の連携などを強化する"現実路線"を掲げる。武力攻撃に至らないグレーゾーン事態の発生に備え、警察・海上保安庁と自衛隊が連携して対処する「領域警備法」の制定などは、その一例だ。
一方の共産党は、自衛隊の解消や日米安保条約の破棄をめざしており、両党の違いは鮮明だ。
「安保法制反対」という目先のただ一点で意見が一致しても、国の方針の根幹をなす防衛政策の考え方が"水と油"では、たとえ政権を獲得しても、国民の生命と財産を守ることはできない。国民の不安は募るばかりだ。
辺野古移設で民進、推進から共通政策では中止?
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題でも、野党共闘のもろさが浮き彫りとなっている。
野党の共通政策には、「沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設の中止」が盛り込まれている。しかし、移設問題をこじらせた張本人は、他でもない民主党政権である。
そもそも、日米両国政府と地元・沖縄との間で構築した"ガラス細工"のような合意が、辺野古への移設だった。
だが、民主党政権は唐突に「県外移設」をぶち上げたり、元の辺野古移設を推進したり、迷走し混乱させた。
今回の民進党の公約でも、「沖縄との対話を重ねながら米軍再編に関する日米合意を着実に実施する」と明記。移設を推進する立場と受け取れる。しかし、共通政策では中止。一体どちらが党の方針なのか。これでは、移設問題をさらに混乱させるだけである。
民主党時代はTPP推進、「今回の合意には反対」と変節
今年2月に日本を含む12カ国で署名、正式合意した環太平洋連携協定(TPP)。政府は参院選後の臨時国会において、その承認や関連法の成立をめざしているが、野党は共通政策でTPP合意に強く反対している。
だが、TPPそのものに反対する共産党や社民党はともかく、民進党は前身の民主党時代に政権与党としてTPP交渉入りを主張していたはずだ。推進者は今も党内に多い。
そうした事情に苦心してか、民進党の公約には、コメや麦など「農産物重要5項目の聖域が確保されていない」といった理由を挙げ、「今回のTPP合意に反対します」と表現されている。「今回の」と限定して、批判をそらそうとあえぐ民進党に対し、マスコミは「TPP自体への賛否は示さずに、農村票を獲得しようとする虫のいい戦術ではないか」(16日付「読売」)などと手厳しい。
一度は政権与党を担ったはずの民進党の主張の変節ぶりから、同党の政権担当力の乏しさが透けて見える。
「原発に依存しない社会」、異なる「ゼロ」への道筋
共通政策では「原発に依存しない社会の実現」を訴えている。この点についても、野党4党それぞれの公約を見ると、見解に相違がある。
民進党の公約は、「2030年代の原発ゼロ」を目標に、「40年運転制限制を厳格に運用する」といった「原則」を徹底させるとして、「例外」もあり得るような表現となっている。
一方、共産党は「原発ゼロ」の方針を強く打ち出し、「原発の再稼働を中止し、すべての原発で廃炉のプロセスに入ります」という姿勢を崩さない。社民と生活の両党も、原発の再稼働に反対している。
原発の位置付けをどうするかは、日本のエネルギー計画や経済活動などを左右する国の重要政策である。考え方の違いを曖昧なキャッチフレーズで覆い隠すのは、あまりにも無責任だ。