e参院選の論点 明らかに
- 2016.06.29
- 情勢/解説
公明新聞:2016年6月29日(水)付
参院選の公示から、きょう29日で一週間。7月10日(日)の投票に向け、与野党党首らが激しい舌戦を繰り広げている。党首討論会などを通して明らかになった選挙戦の主要な論点をまとめた。
英EU離脱、世界に不安 経験豊富な自公で難局克服
政治の安定
欧州連合(EU)からの離脱が過半数を上回った英国の国民投票の結果を受け、世界経済が大きく揺れ、日本の株式市場も乱高下した。
民進党などは「円安・株高頼みのアベノミクスの脆さをあらわにしている」などと批判しているが、「参院選を意識して経済失政を強調する狙いで、英国のEU離脱問題による市場混乱を引き合いに出したのなら、見当外れ」(読売新聞 28日付)である。
安倍晋三首相が議長を務めた5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、英国のEU離脱は世界経済への「深刻なリスク」の一つであるという認識が共有されている。
今回、実際に英国のEU離脱が決まったことから、伊勢志摩サミットで懸念されていたことが現実になった。
英国の国民投票によって、世界経済や金融市場の先行きに不透明感が一気に高まっている。「こういう時だからこそ、安定政権が必要」(山口那津男代表)である。知恵と経験の豊富な自公の安定政権でなければ、この難局を乗り越えることはできない。
政治の安定には与党が参院選に勝利して、多数の議席を得る以外に、もう一つ重要な側面がある。それは、国民が安心できる方向に政治が前進しているかどうかであり、数の安定だけで実現できるものではない。具体的には、国民の声を聞き、集約し、生活者の目線で政策を遂行する公明党が、連立政権の中で存在感を存分に発揮しているかということだ。いわば「質の安定」といえよう。
この点について、一橋大学大学院の中北浩爾教授は、「公明党に期待していることが二つある。一つは、政党が対立する中で中道的なポジションを占め、国民の常識に基づいた、穏健で中長期的な合意をつくる求心的な役割。もう一つが、政党政治において社会とのパイプ役として機能することだ。(中略)社会に確固たる基盤を持つ中道的な勢力が政治の中心を担う。これこそ、本当に安定的な政党政治だ。まさに公明党的なものではないか」(公明新聞 5月28日付)と公明党の持ち味に大きな期待を寄せる。
政権与党として数々の失敗を繰り返した旧民主党と何ら変わってない民進党と、政権運営の経験がない共産党を中心とする連立政権では、とても政治の安定は望めない。
この参院選で自公が政治の安定を継続する勢力を獲得することで、さまざまな分野に及ぶ英国のEU離脱の影響を最小限に抑え、実体経済への悪影響を防ぐことができる。
雇用は改善、税収もアップ 説得力ない野党の批判
アベノミクス
今回の参院選の最大の争点は、自公連立政権が3年半、進めてきた経済政策(アベノミクス)をさらに推し進めるのか、それとも後退させてしまうのかである。
アベノミクスが日本経済の再生に向け、着実な成果を上げてきたことは、さまざまな経済指標からはっきりと見て取れる。
まず雇用環境が大幅に改善した。求職者1人当たりに企業から何件の求人があったかを示す有効求人倍率の全国平均は1.34倍(今年4月現在)となり、約24年ぶりの高水準を記録した。
また、就業地別に見た有効求人倍率は、調査を開始した2005年2月以降で初めて全都道府県で1倍を超えた。
さらに、正社員の基本給を底上げするベースアップ(ベア)が3年連続で実現。物価変動の影響を除いた実質賃金の上昇は直近3カ月(2月~4月)続いている。
アベノミクスによる景気回復に伴い、法人税や所得税などの税収も増えた。
旧民主党政権当時(12年度)に比べて16年度は国税で15兆円、地方税を含めると21兆円の増収となる見通しだ。
この中には、消費税率8%への引き上げにより増えた8兆円も含まれるが、それを差し引いても13兆円の税収増である。
企業の収益を示す経常利益も、15年度の合計が33兆6600億円で、12年度の20兆500億円から68%もアップした。
民進党や共産党などの野党は「アベノミクスは失敗」などと批判している。しかし、アベノミクスの「『成果』を覆す材料を示せていない」(日本経済新聞 22日付)ため、説得力に欠ける。
ただ、アベノミクスは着実に成果を上げているが、まだ道半ばである。
公明党は、アベノミクスによる景気回復の実感が、地方や中小企業、家計にも及ぶ「希望が、ゆきわたる国」の実現を掲げ、そのために必要な政策を訴えている。
理念や政策大きく異なる 民進 共産の政権構想を拒否
民・共の「野合」
民進党と共産党は自公連立政権の打倒をめざし、改選定数1の「1人区」で統一候補を擁立するなど共闘を進めているが、やはり足並みの乱れが日に日に明白になっている。
共産党は野党連立政権「国民連合政府」構想について、次期衆院選までに前向きな結論を出すと意欲を見せている。
しかし、民進党はこの構想をきっぱりと拒否している。
参院選公示前日の21日に行われた日本記者クラブ主催の党首討論会で、民進党の岡田克也代表は「今、共産党と連立政権を組むことは、理念、政策が違う以上、それは無理」と明言した。
そもそも民進党は、安全保障に関する参院選の公約で、米軍に対する自衛隊の後方支援について、公海上における対米支援任務の拡大なども掲げている。
これに対して共産党は、自衛隊は「憲法違反」だと断定してはばからない。将来的に自衛隊を解消するとも主張している。
共産党の藤野保史政策委員長が26日のNHKの討論番組で防衛費を「人を殺すための予算」と耳を疑う発言をし、番組終了後に「不適切だった」と撤回する騒ぎになった。
この番組では、公明党の石田祝稔政調会長ら与野党の出席者が発言の訂正などを求めたが、民進党の山尾志桜里政調会長はコメントしなかった。マスコミからも「『民共協力』を考慮して批判的な見解を避けたのか。共産党との共闘そのものに無理があることを露呈した場面といえよう」(産経新聞 28日付)と批判される始末だ。
消費税についても、民進党は社会保障の財源に必要であるとの立場だが、共産党は「『消費税にたよらない別の道』がある」と豪語する。しかし、その財源の裏付けは全く根拠がない。
また、憲法改正をめぐる立場も、現政権下では反対しつつも、基本的には「容認」している民進党と、「全条項を守る」と反対の共産党では、埋めがたい溝がある。
こうした致命的な違いを棚に上げて選挙協力を優先する姿は、やはり「野合」以外の何ものでもない。