e英国民投票の教訓 民主主義支える「熟慮の1票」を
- 2016.06.30
- 情勢/解説
公明新聞:2016年6月30日(木)付
欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国の国民投票は、有権者が投じる「1票」の重みを改めて印象付けたのではないか。
現在、英国では、「離脱に投票したことを後悔している」「まさか実現するとは思わなかった」と告白する市民が続出している。国民投票のやり直しを求める署名は約400万人に上るという。それほど離脱決定は意外な結果だったようだ。ただし、一度示された民意は重く、英国内で取りざたされる再投票は現実的とは見られていない。
英国民投票後に行われたスペインの議会選挙では、EUに批判的な勢力への支持が伸び悩む結果となった。「EU加盟国の脱退」という事態を目の当たりにしたスペインの有権者は危機感を強め、反EU派の極端な主張を疑問視するようになったという。
英国民投票の結果は、EU加盟国の国民にEUの今後に対して熟慮を促すきっかけとなったのではないだろうか。
それにしても国民投票に先立ってEU離脱、残留のメリット、デメリットが英国国民にどれだけ深く共有されたのだろうか。離脱決定は、国民投票が保守党内で離脱・残留両派の政争の具とされた果ての誤算だったとさえ報道されている。
日本では今、参院選が行われている。選挙戦では民進、共産などの野党が共闘し、選挙区では32の1人区で統一候補を擁立しているが、憲法や安全保障政策、社会保障の財源としての消費税への考え方など、国の針路に関わる理念や政策で民進、共産両党の違いはあまりにも大きい。
国会議員には、国会で国の針路を議論する役割がある。しかし、重要政策の相違を棚上げし、「自公政権打倒」だけを旗印とするようでは、有権者に対して、まるで「取りあえずの1票」を求めているようなものであり、無責任な姿勢と言わざるを得ない。
英国民投票が示した教訓の一つは「熟慮の1票」の重要性であろう。各党、各候補者の主張を有権者がよく吟味することが、民主主義を機能させるためには不可欠である。
有権者の熟慮の結果が公明党への「1票」となるよう残る10日間、徹して訴え抜いていきたい。