e参院選結果 識者に聞く
- 2016.07.14
- 情勢/解説
公明新聞:2016年7月14日(木)付
18歳選挙権 先入観なく政策選択
主権者教育が投票率に反映
国際医療福祉大学 川上和久教授
―参院選の結果について。
川上 今回も経済や社会保障、外交・安全保障といった重要な政策の舵取りを自公政権に引き続き託すとの民意が示された。
しかし、与党に厳しい結果となった1人区の地域は、自分たちが政治から取り残されているとの不安があるのではないか。政党がしっかり寄り添わなければ、米大統領選のトランプ氏への支持やEU(欧州連合)離脱をめぐる英国の国民投票を見ても、社会不安がポピュリズムの温床になる。これまで以上に国民に寄り添える自公政権であってほしい。
―今回初めて18歳選挙権が導入された。投票率は、18歳が51.17%、19歳が39.66%だった。
川上 新聞各社が行った事前の世論調査では18、19歳の参院選への関心は低かっただけに、正直ほっとしている。昨年6月、国会で18歳選挙権の導入が決まって以来、短期間ながらも取り組まれてきた模擬投票やディベートなどの主権者教育と、学校や選挙管理委員会、政党などによる呼び掛けの成果だと思う。
ただし、今回は18歳選挙権が導入された初の国政選挙ということで関心が集まったとの要因も否定できない。期日前投票ができる時間や場所を広げるなど、一層の知恵を絞っていくべきだ。また、18歳の高校生に対して強いアプローチがなされた分、大学生への主権者教育が不十分になってしまったかもしれない。
―10代、20代の投票率を高めるには。
川上 政治参加には動機付けが必要だ。私も大学生への授業を受け持っているが、常に世の中で起きている問題を「自分ゴト化」できるかが大事と言い聞かせている。主権者教育の充実が欠かせない。
また、自分たちの世代の代表が立候補すれば関心は自ずと高まるので、被選挙権年齢の引き下げも一つの考え方だろう。個人的には、まずは地方議会から始めるのが良いと思う。
―今後に向けて。
川上 若い人は変なしがらみや先入観がなく、政策優先で投票先を選べるので大きな可能性がある。
落選はしたが、今回の参院選では主要政党が強調しなかったマンガやアニメ、ゲームの表現の自由を守るという政策を主張し、約29万票を獲得した候補者がいた。まだまだ政党がすくい取れていない声があるとの重要な示唆だと思う。
一方で、センセーショナルなパフォーマンスで若者を扇動した候補者や団体もいた。表面的な情報に流されることなくきちんと政策の中身で判断することが求められる。