eコラム「北斗七星」
- 2016.07.19
- 情勢/社会
公明新聞:2016年7月16日(土)付
今も思い出す言葉がある。生前、高倉健さんが北野武氏と共に芸能ニュースで取り上げられた時のこと。「武ちゃんが『健さんは座らない』と言ったから、僕は座れなくなったんだよ」と北野氏に声を掛けたのだ◆以前から"伝説"とされていた、「健さんは座らない」。自分の撮影が終わっても、共演者の撮影が終わるまでは立ったまま待っている。寒い日でもストーブにあたらない。誠実でいちずな人物像が浮かぶが、逸話の真偽は定かではなかった。放送を見た人の受け止め方も様々だったろう◆ところが事実は他人に言われたから座らなくなったわけではなかった。「どうか先にお帰りになって」「せめてイスにでも腰掛けていらしてください」と言っても、立ち続けていたらしい。浅丘ルリ子さんが『私の履歴書』(日経)で証言している◆「大勢の人たちに慕われている理由がよく分かった」とも綴った浅丘さん。人は言動を見ているものだ。激烈だった参院選。先日、家族が同じマンションの住人から声を掛けられた。「公明党はいつも安心な人を立てると夫とも話していたんです」と、推した理由を明かしてくれたのだ◆党について家族で語ってきた知人とはいえ、候補と接する機会は少なかったはず。それでも分かってくれていたことに涙が滲んだ。「誠心誠意」を持って、次へと進みたい。(田)