eコラム「北斗七星」
- 2016.07.19
- 情勢/社会
公明新聞:2016年7月18日(月)付
友人が誇らしげに見せたスマホの写真は、庭木の巣箱から頭を出し外をうかがうシジュウカラを撮影したものだった。白いほお、胸から腹のネクタイ模様が特徴の小鳥だ。とても愛くるしい◆ならばこちらもと、板の切れ端でえさ台を作り、米粒を載せて庭に置いた。最初は警戒していたスズメたちがしばらくすると訪れるように。その様子は、『鳥が教えてくれた空』(集英社)の次のくだりそのものだった◆「たとえば餌を見つけたとき、スズメは小刻みなけたたましい声で『ジュクジュクジュク......』と長く繰り返し、仲間を呼ぶ」。同著で数々の小鳥たちを生き生きと描く筆者。その感性には感心するばかりだ◆筆者は三宮麻由子さん。「四歳のときに一日にして失明」した。成長に伴い「目が見えない」という現実の壁にぶつかる彼女は、野鳥を通して自然と接することで自分自身の役割に目覚め、人生をたくましく歩む◆そんな彼女は「自然はまさに持続性のあるカンフル剤」と語り、自然に親しんでいる。このカンフル剤は「だめになりかけた物事に対してする、ききめのある手段」(国語辞典)ほどの意味だろう◆もうすぐ夏休み。たまには忙しい日常生活を離れ、深緑の山々や広大な海で自然に親しみながらリフレッシュするのもいいかもしれない。(六)