eトルコの政情不安 混乱収束させ、国内融和を早く

  • 2016.07.21
  • 情勢/国際

公明新聞:2016年7月21日(木)付



トルコで起きた軍の一部によるクーデター未遂は、国際社会に大きな衝撃を与えた。言うまでもないが、民主的な手続きで選ばれた政権を武力で転覆させることは許されない。多くのトルコ国民が戦車の前に立ちはだかった光景は、軍の企てが国民の支持を得られなかったことを象徴していたといえよう。

米国や欧州連合(EU)などが、現政権の支持を表明したのは当然のことだ。ただ、トルコ政府が強権的な姿勢で事件の捜査と全容解明に当たっているとして、憂慮する向きもある。こうした国際世論も踏まえながら、1日も早く混乱を収束させ、国内融和を図ってほしい。

「東西文明の十字路」と言われてきたトルコ。欧州や中東・中央アジアに隣接することから、いわば東西の架け橋としての役割を果たしてきた。さらに、中東から欧州に流れる難民が経由する場所でもあり、EUは難民対策で同国の協力が欠かせない。その政情不安は、国内のみならず国際的にも極めて大きな影響がある。

シリアとイラクに隣接するトルコは、過激派組織ISに対しても包囲網の最前線に立っている。トルコの混乱が長引けば、中東情勢の混迷に拍車を掛ける事態になりかねない。国際社会は、同国の安定を支えていく必要がある。

近年、トルコでは、テロが相次ぎ、外国資本が離れつつあるといわれる。今回の事件が、そうした動きを加速させることにならないか。主要な貿易相手国である欧州や中東の経済も先行きが不透明で、トルコ経済への影響が懸念されている。

そうした中で、トルコと日本の間には、長い友好関係の歴史があり、8割のトルコ国民が日本に好感を抱いているという。政情の安定に向けて、わが国も積極的に貢献策を模索していくことが必要だ。

わが国は従来から、建設業やエネルギー分野での貢献などを通してトルコとの関係強化を進めてきた。トルコは昨年、G20を開催するなど国際社会での存在感を高めており、わが国からも多くの企業が進出している。邦人の保護に万全を期しながら、官民両面での関係強化を続けていきたい。

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