eコラム「北斗七星」

  • 2016.07.25
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年7月23日(土)付



世界遺産・原爆ドームでの初の耐震補強工事が20日、完了した。広島市が昨年12月に着工し、震度6弱の地震に耐え得るよう、上部外壁3カ所に鋼材を当てて補強した◆原爆ドームには、これまで3回の保存工事が施されてきた。最初の2回の工事(1967年と89年)を主導した故・佐藤重夫広島大学名誉教授は、壁は「手で押してもぐらぐら動く」「近寄ることも危険」な状態だったと証言する◆保存工事は、壊れたものを、できるだけ壊れたままの状態で、それ以上壊れないようにする、前例のないものとなった。エポキシ樹脂を壁に圧入し全体を固める工法を採用。工事費は莫大になったが、国内外から多くの浄財が寄せられ、後の世界遺産は現在の外観を保つに至った◆原爆ドームの世界文化遺産登録から今年で20年。登録を決めた、96年12月の世界遺産委員会で米国は、戦争の「負の遺産」の登録に不支持を表明した。20年後、現職の米国大統領が被爆地に立ち、当の戦争遺跡を見上げる日が来ると、誰が予想しただろう◆まもなく広島は71回目の原爆の日を迎える。原爆ドームが永遠にその姿をとどめ、「過去に解き放たれた恐ろしい力に思いをはせるために」この地を訪れる人に、「声なき証人」として、原爆の惨禍を伝え続けてくれることを願ってやまない。(中)

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