eタクシー値下げ実験 高齢者らのメリットは大きい
- 2016.07.28
- 情勢/解説
公明新聞:2016年7月28日(木)付
必要な人にサービスが届く、使い勝手の良いタクシー料金に見直してほしい。
国土交通省は26日、東京都内4カ所のタクシー乗り場を対象に、初乗り運賃が410円のタクシーを試験的に導入すると発表した。短距離利用の需要を確認することが目的で、期間は8月5日からの約1カ月間。都心の現在の初乗り運賃は2キロまで730円だが、この距離を1.059キロにして運賃を引き下げ、加算距離も280メートル(90円)から237メートル(80円)に短縮し、2キロまでなら現在よりも低料金で利用できるようにする。
今回の試験導入を踏まえ、初乗り運賃の引き下げが本格導入されれば、自家用車や自転車などの移動手段を使えない高齢者らには朗報だろう。
1キロ以内の場所に行く場合、730円だった運賃が320円も安くなるため、格段にタクシーを利用しやすくなる。1キロと言っても、例えば、体調が悪い高齢者にとって医療機関まで徒歩で移動するのは体力的な負担が大きい。路線バスは低料金ではあるが自宅と停留所、目的地と停留所の間を歩かなければならない。その点、自宅と目的地を「ドアツードア」で結んでくれるタクシーが、従来よりも低料金で利用できるメリットは大きいと言えよう。
今後も増加が見込まれる訪日客にも、土地勘がないことから近距離でのタクシー利用に対するニーズは高いとされており、初乗り運賃の引き下げは歓迎されるのではないか。運賃見直しでタクシー利用者の裾野が広がれば、業界全体の活性化も期待できる。
一方で、初乗り運賃の引き下げがタクシー運転手の収入減につながるのではないかとの指摘もある。国交省は試験導入の結果を詳しく検証し、利用者と運転手の双方にとってプラスになるような料金体系をめざすべきではないか。
国交省はこれまでも、タクシー運賃の見直しを検討してきたが、都内のタクシー会社から初乗り運賃引き下げの申請を受けて、今回の試験導入を決めた。同省は、アンケートを通して利用者の声を把握し、効果を検証する方針だ。利用者の需要をどれだけ満たせるか、事業者への影響はどうか、今後の取り組みを注視したい。