e消防団の安全確保 津波災害では団員も退避優先で
- 2016.08.08
- 情勢/解説
公明新聞:2016年8月8日(月)付
2011年3月の東日本大震災では254人もの消防団員が犠牲になった。その多くは、津波から住民を守るために水門の閉鎖や避難誘導、救助活動に従事をしていた。
消防団は地域に根差した組織であり住民からの信頼も厚い。土地勘もあるため、災害時には誰よりも早く現場に駆け付け、最後まで活動することが期待されている。
しかし、津波からの避難は時間勝負であり、消防団員も避難優先で生命を守る必要がある。消防団なしにはその後の復旧、防災も円滑に進まないからだ。
消防団はこの教訓に基づき津波災害時の活動内容を再検討し、それを新たな活動方針として定め、その下で研修・訓練を重ねる必要がある。
消防庁は12年3月から、津波災害が予想される全国656市町村に対し、「津波災害時の消防団活動・安全管理マニュアル」を策定するよう要請。先月発表された調査(4月1日現在)によると、策定済みの市町村は86.4%に上った。また、策定していない89市町村のうち、今年度中に策定予定との回答が65あったことから、策定済みと合わせると約96%の市町村で整うことになる。
マニュアルは、津波災害時の活動内容や活動可能時間を定めることが目的だ。
水門閉鎖活動については消防団員は原則行わず、避難誘導活動のみに専念することを明確にしている。津波時の集合場所を別に指定したり、活動可能時間を例えば20分に限り、それを前提にして消防団員の避難開始時間を決めることにした自治体も多い。
さらに、津波災害では、住民の率先避難が基本となるため、津波の到達時間が短い場合には消防団員も住民と共に避難することを定めた自治体もある。
津波災害では、土地と人の情報に身近に接している消防団員でなければ対応できない救助・救援活動もある。「消防団員が自らの命を守ることで多くの命が救われる」という事実を改めて確認したい。
東日本大震災の経験を踏まえて成立した消防団基本法(13年12月施行)は、消防団を地域防災力の中核と位置付けた。消防団員の安全確保にさらなる努力が求められる。