e外国人の訪問介護 利用者との信頼構築を丁寧に
- 2016.08.09
- 情勢/解説
公明新聞:2016年8月9日(火)付
団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となる2025年に、医療や介護などの福祉に対する需要はピークを迎える。あと10年足らずで到来する超高齢社会への備えを急がなければならない。
この「2025年問題」の一つに介護職員の確保がある。現状のままでは要介護者の急増に追い付かず、30万人以上も不足するという。
このため厚生労働省の検討会は5日、一定の条件で外国人介護士に訪問介護を認めることを決めた。来年4月からの導入をめざしている。
日本人職員の待遇改善などを進めていくことは大前提だが、それだけで、2025年問題に対処できるだけの十分な担い手を確保できるかといえば難しいだけに、検討会の決定は妥当なものであろう。
日本は現在、経済連携協定(EPA)に基づき、ベトナム、フィリピン、インドネシア3カ国から介護人材を受け入れているが、勤務内容は特別養護老人ホームなどの施設介護に限られている。今回の検討会の決定は、現場で経験を積んだ上で、介護福祉士の資格を取った人に限って訪問介護を解禁するというものだ。
円滑な事業にするには、日本語でのコミュニケーション能力が課題となろう。高齢者の自宅で食事やトイレの介助などを行う訪問介護となると、日本人職員がサポートできる施設内勤務以上に、利用者やその家族と信頼関係を築く必要がある。外国人介護士に対する高齢者の不安も和らげなければならない。
厚労省は、こうした課題に対処するため、外国人の訪問介護に関する相談窓口や、高齢者が安心して介護サービスを利用できる仕組みなどの支援策を年内にまとめる考えだ。利用者、介護士の双方の意向を十分に踏まえ、言葉や文化の違いを乗り越える取り組みを期待したい。
外国人介護士が定着するには、なお多くのハードルがある。仕事面だけでなく、病院や保育園探しなど、生活面で日本人職員が親身に相談に乗ることも求められよう。現在も、こうした支援を行う施設は評判が広がり、優秀な人材が集まりやすいという。
異国で暮らす不安を丁寧にくみ取り、共に支え合う社会を築いていきたい。