e低所得者向け住宅 空き家を活用できる仕組み探れ

  • 2016.08.17
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年8月16日(火)付



日本は諸外国と比べて住宅費の負担が重いとされる。低所得者や年金生活者は、なおさらそう感じるのではないか。子育て中の世帯も、住宅費の負担感は重くならざるを得ない。こうした人たちが負担感をあまり感じないで住める住宅を確保するにはどうしたらよいだろうか。

国土交通省の有識者委員会は7月、既存の空き家や空き室を活用し、低所得者や高齢者、子育て世帯などに安く貸し出す民間賃貸住宅制度の創設を求める中間報告を公表した。住宅のセーフティーネット(安全網)機能を強化する意味で、提言に注目したい。

現在、低家賃の公営住宅は不足している。2014年の入居応募倍率は全国で5.8倍、東京都に限ると22.8倍に上り、希望しても入居できない世帯が多い。地方自治体は老朽化施設の建て替えを優先せざるを得ず、新設に思い切った対策を取れていない。

このため、報告書は全国に約820万戸ある空き家と空き室を活用し、入居希望の多い公営住宅の役割を補完するよう求めている。人口減少社会の日本では、将来的に世帯数が減って空き家・空き室は今以上に増えるだろうから、これらを有効に活用することは至当な判断といえよう。

ただ、乗り越えるべき課題もある。民間賃貸住宅の約2割の住宅は1980年以前に建築され、耐震性に問題がある恐れがある。高齢者の孤独死や家賃滞納などのリスク(危険性)を恐れ、賃貸人が入居を拒む事例もある。空き家・空き室の活用で多くの人が住めるようになっても、安全性に問題があったり、実際に入居できないようでは困る。

また、所有者を特定できない空き家の対策もさらに進めていく必要がある。

空き家の活用に向け、公明党は物件情報を公開する「空き家バンク」制度導入などを提案しているが、報告書も一定の基準を満たす物件を所有者が自治体に登録して貸し出す制度や耐震改修への支援、家賃の一部補助を提案しており、検討に値する内容だろう。

希望者が円滑に入居できる安全な住宅を確保する仕組みづくりは、とても重要だ。有識者委は年度内に最終報告をまとめるが、そうした点を十分に議論してほしい。

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