e若者雇用 優良中小企業を国が認定
- 2016.08.17
- 情勢/解説
公明新聞:2016年8月17日(水)付
広がる「ユースエール」制度
採用、育成、定着率などで評価
円滑なマッチングめざす
若者の雇用管理が優良な中小企業を、国が認定する「ユースエール」制度が各地で広がっている。公明党が推進し、2015年9月に成立した若者雇用促進法に基づくもので、人材の採用、育成に熱心な中小企業と若者のマッチング(適合)向上が狙いだ。認定された企業の取り組みと、制度の概要を紹介する。
15年10月から始まったユースエール制度は、若者の雇用に関して一定の条件を満たしている優良な中小企業(常時雇用者300人以下)を認定するもの。
ユースエールは、認定企業が取得・使用できる認定マークの愛称で、「若者(ユース)にエールを送る事業主」を意味する。認定企業数は、今月12日時点で全国62社に上る。
その一つ、地質調査などを手掛ける株式会社三本杉ジオテック(福島市)では、若者が働きやすい環境づくりに力を注いでいる。社員15人の同社では、有給休暇を入社直後から付与したり、時間単位で取得できたりする制度を導入。また、取りづらい休暇の取得を促すため、14年度からは記念日休暇制度(年2日)も取り入れている。
こうした独自の取り組みを進めてきた同社だが、採用情報を発信するための資金や人材の不足などから、ここ数年は新卒の求人募集を出しても問い合わせすらない状態が続いたという。そうした中、15年12月にユースエールの認定を受けると、認定企業を重点的にPRする厚生労働省の企業検索サイトなどで広くアピールされたことにより、採用の問い合わせが相次いだ。
今年4月から働き始めた佐藤歩さん(25)も、その企業検索サイトを通じて同社の存在を知った。佐藤さんは「人を大切にする社風に魅力を感じた」と話す。同社代表取締役の三本杉栄広さん(73)は、「地方の小さな企業は、人材を確保することが難しい。認定制度は情報発信を後押ししてくれ、非常にありがたい」と語る。
国がこの制度を導入した背景には、若者と中小企業のミスマッチ解消とともに、ブラック企業の社会問題化を受け、「職場環境の改善を促すことで若者の離職率を引き下げたい」(厚労省)との狙いもある。
そのため、同制度の認定を受けるには、若者の採用や人材育成に積極的に取り組んでいる上で、「直近3年間の新卒採用者の離職率が20%以下」「所定外労働(残業)が月平均20時間以下」「有給休暇の年間平均取得日数が10日以上」などの要件を満たさなければならない。必要な雇用情報を公表していることも求められる。
今年6月に認定を受けた、機械メーカーのアシザワ・ファインテック株式会社(千葉県習志野市)では、社長の芦澤直太郎さん(52)が率先して、職場環境の改善に取り組んでいる。
従業員121人の同社では、芦澤社長が「社員は財産」と強調する通り、人材の能力開発に力を入れる。例えば、新入社員に対して、入社後3カ月間で全ての部署を体験させたり、直属の上司とは異なる先輩社員が相談相手となるメンター制度などを導入している。
こうした取り組みによって、従業員の仕事への高い意欲が維持され、直近3年間の定着率は92%に上る。入社1年目の渋谷夏子さん(23)は、「目標になる女性の先輩社員も多く、早く一人前になれるよう頑張りたい」と話す。芦澤社長は「国からお墨付きをもらえたことなので、認定を積極的にPRし、多様な人材の採用につなげたい」と語る。
重点PR、助成金加算で事業主を後押し
ユースエールに認定された企業は、国からさまざまな支援を受けることができる。企業検索サイトやハローワークなどで重点的にPRされるほか、認定マークを商品や広告などに使用して、若者の採用や育成に積極的であることをアピールできるようになる。さらに、若者の採用・育成を支援するため、キャリアアップ助成金などの額が加算される。また、日本政策金融公庫における低利融資や、公共調達における加点評価といったメリットもある。
厚労省は20年度までに、認定企業を1000社にすることを目標に掲げる。同省若年者雇用対策室は「事業所や大学などへの周知を強化していきたい」としている。