e地産地消  新鮮な野菜、住民に大好評

  • 2016.08.17
  • 生活/生活情報
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公明新聞:2016年8月17日(水)付



キラリ 都市農業<1>
少量多品目生産で消費者ニーズに対応



公明党のリードで都市農業振興基本法が制定され、5月には都市に農地は「あるべきもの」と位置付けた基本計画が策定された。新鮮な農産物の供給や防災、農業体験など多様な機能を持つ都市農業の魅力に迫り、"都会のオアシス"を守る意義を探った。

「夏はナスやキュウリ、ピーマン、トマト、トウモロコシなど12品目を直売所に卸しています」。こう語るのは、東京都世田谷区で農業を営む荻野顕治さん(48)。閑静な住宅街の中にある25アールの農地で旬の野菜や草花を育て、地元にあるJA東京中央の共同直売所に出荷している。

世田谷区は高級住宅街がある一方で農業との関わりは古く、江戸時代以降は大消費地の江戸・東京に農産物を供給する近郊農村として発達してきた。荻野さんも江戸時代から続く農家の後継者。都市化に伴い激減したものの、区内には340戸(2015年時点)の農家が残り、東京23区で2番目の農地面積を誇る。世田谷区は現在、区内産農産物「せたがやそだち」のPRに力を入れるなど地産地消を積極的に推進し、消費地に近い都市農業の利点を生かした独自の振興策に取り組んでいる。

都市農家も工夫に余念がない。荻野さんは地域の消費者のニーズに応えようと、特定の農産物を大量生産して市場に出荷するのではなく、限られた土地を有効的に活用しながら「少量多品目生産」を実践。それだけでなく、「消費者が近くにいるからこそ、より新鮮で安全なものを届けたい」との思いで、化学合成農薬や化学肥料は使わない。毎朝早くに収穫した野菜を、その日のうちに地域住民の食卓に届けるために汗を流している。

区内農家の8割以上が農地面積50アール未満の小規模経営。このため、少量多品目生産で個人直売所やJAの共同直売所などで販売するのが主流だ。区内には無人も含めて約280カ所の直売所があり、地元の農産物を手軽に購入できる環境も整っている。

荻野さんが出荷している共同直売所「ファーマーズマーケット二子玉川」は、開店前から地元住民の行列ができるほど好評だ。常連客からは、「スーパーで売っているものと味が全然違う」「作っている人の顔が見えるから安心して食べられる」「ほかではあまり売られていない、世田谷ゆかりの野菜も買える」―などの声が寄せられているという。

JA東京中央では、「都市部での農業振興への理解は深まりつつある」と現状を評価。

その上で、「農家を支えるだけでなく、地域住民の生活を豊かにする意味からも都市農業振興が必要だということを、これからも広く発信していきたい」と訴えている。

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