e防災空間 農地で炊き出し訓練
- 2016.08.18
- 情勢/社会
公明新聞:2016年8月18日(木)付
キラリ 都市農業(2)
一時避難場所など行政と農家の協定広がる
東京・練馬区
都内の西武池袋線保谷駅から10分ほど歩くと、住宅地の中に約70アールの農地が広がる。練馬区内で加藤義松さん(62)が経営する農業体験農園だ。住民に種まきから収穫まで野菜作りを体験してもらい、年間を通じてネギやニンジン、トマトなどおよそ30品種を育てている。
地元・南大泉3丁目町会の会長も務める加藤さんは、農業体験農園で住民との触れ合いを大切にする一方、「住宅が密集する都市では、特に災害時に農地を避難場所として活用することが重要」と指摘する。今年3月には大規模災害を想定した炊き出し訓練を開催。参加した町会の近隣住民約300人は、農園で採れた野菜で豚汁を作り、親睦を深めながら防災について学び合った。
「参加者の多くが『安心感につながる』と言ってくれることが大変うれしい」。訓練の感想を語る加藤さんは、今後も炊き出し訓練を続けていく考えだ。
都市部でも首都直下地震など大規模災害への備えが急がれる中、住宅地にある都市農地は、避難場所に活用できるだけでなく、延焼を防ぐ空間になるなど、防災・減災に有効な役割を果たす。練馬区としても「炊き出し訓練の模様を好事例として区のホームページで紹介したい」(区産業経済部)と、加藤さんの取り組みを評価。都市農地を有効活用した防災活動を積極的に促していく方針を示している。
都市部の自治体にとって、災害が発生した時に速やかに農地を防災空間として利用できる協定を農家や農家の同意を得た農協とあらかじめ締結することも有効だ。首都圏、中部、近畿の三大都市圏特定市のうち、協定締結を実施しているのは東京の練馬、世田谷両区など56の自治体(昨年3月時点)。協定項目では「避難場所」(44自治体)としての活用が最も多く、「資材置き場等への利用」(36自治体)、「生鮮食料品の優先供給」(31自治体)などと続く。
農林水産省都市農業室では、「協定の締結は、都市圏を中心に徐々に広がりつつあり、今後も支援していきたい」と語っている。
三大都市圏特定市
東京都の特別区、三大都市圏にある政令指定都市と、既成市街地、近郊整備地帯などに所在する市で214自治体。