e水道施設の老朽化 自治体超えた広域化で対応を

  • 2016.08.19
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年8月19日(金)付



首都圏ではこの夏、水源となるダムの貯水量が少ないため節水が呼び掛けられた。ただ、今のところ日常生活に支障が出るようなことはなく、逆に水道代の節約になった家庭もあるのではないか。

その水道料金(上水道)の値上げが全国的に相次ぎ、高止まりの傾向にある。

国土交通省の「日本の水資源の現況」(2015年版)によると、水道料金は過去一貫して上昇している。12年度の1カ月の家庭用料金(10立方メートル当たり)は、全国平均で1453円だった。

加えて、同料金を自治体別で比較すると、大都市間では最大約3倍の開きがあるだけでなく、地方都市ほど高くなっている。

原因は、水道管や浄水場といった水道施設の老朽化に伴う維持・更新費用の増大と、その負担を支える人口の減少だ。戦後の高度経済成長期から始まった水道の整備は、全国普及率がほぼ100%に達しているが、水道管の耐用年数である40年が過ぎる中で配水管の腐食による漏水事故が多発しており、地震に対する耐震性の低下も深刻だ。

国民の健康的な生活を下支えするライフライン(命綱)を、次の世代へと引き継ぐための取り組みを急がなければならない。

まずは、政府の「未来への投資を実現する経済対策」に盛り込まれた、下水も含む水道施設の老朽化対策を着実に遂行することだ。その上で、全国の水道施設の使用寿命を長期化するために、各自治体がその管理状況を常に把握する努力も必要である。厚生労働省が検討を進める水道資産の管理策導入は一案だろう。

地方の水道事業の再建策も欠かせない。水道事業の運営は、財政力の乏しい市町村が中心的に担い、地域住民が使用料金を支払うことで成り立つ「独立採算制」だが、急速に人口減少が進む地方の事業運営はそのあおりを真正面から受けている。

公明党の上水道・簡易水道問題議員懇話会が一貫して提言しているように、自治体の枠を超えた事業の広域化による運営基盤の強化も重要だ。

持続可能な水道事業の構築は、人口減少社会における他のインフラ(社会基盤)整備にもつながる課題である。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ