e子どもを薬物から守る
- 2016.08.24
- 情勢/解説
公明新聞:2016年8月24日(水)付
夏に乱用開始の罠 潜む
"夜回り先生"水谷修氏
覚醒剤や危険ドラッグなど、若者の薬物乱用が後を絶ちません。その危険性や、子どもたちを守るための具体策を"夜回り先生"水谷修氏に聞きました。
夜の繁華街 優しい言葉は信じるな
―誘惑の多い夏、ドラッグに手を出す若者がいないよう望みます。
水谷修氏 残念ながら、若者の間で薬物は恐ろしいほどまん延している。10代後半の2人に1人が身近に見聞きし、4人に1人が誘われるといわれる。若者の場合、グループ内の1人が使えば、全員に"感染"してしまう怖さがある。
薬物乱用のスタート地点のほとんどは、夜更かしが増える夏の時期。夜の世界の大人たちは子どもを狙っている。
―子どもたちをドラッグから守るには。
水谷 家族そろって朝食を取るなど、子どもが規則正しい生活を送れるよう心掛けてほしい。帰宅時間にも注意が必要だ。例えばイベントで帰宅が夜10時を過ぎる場合、必ず親や親戚が付き添ってもらいたい。
一方、子どもたちに対しては「夜、君たちに優しく声を掛ける大人は信じるな」と訴えたい。信じていいのは「帰りなさい」と怒ってくれる人だけ。甘い言葉の裏には、うそと悪意が満ちている。
―薬物に手を出してしまった人がそばにいたら。
水谷 アドバイスはただ一つ。「逃げなさい。捨てなさい。関係を切りなさい」だ。乱用者の近くにいてはあまりに危険すぎる。
薬物は人を3回殺す。最初は頭。脳が乗っ取られ、薬のことしか頭になくなる。次に心。人に本来ある優しさが失われ、愛する人を平気で裏切るようになる。「止めろ、友達なんだから」と言ったって乱用者の耳に入らない。最後は肉体まで殺してしまう。
ドラッグを使う人間は、もう君の愛した人ではない。薬物そのもの。愛では勝てない。むしろ愛すればするほど、相手は「自分は捨てられてない」と思い込み乱用に走ってしまう。
―危険性を訴えていく必要がありますね。
水谷 その通り。薬物の乱用は「一に犯罪。二に病気」であるということだ。法律を犯し、大切な人を裏切り悲しませるだけでなく、自らの意志の力ではどうしようもない依存症に陥る。タバコの数千、数万倍も依存性の強い大麻や覚醒剤、危険ドラッグなどは一度使うと止められない。乱用するたびに脳や神経系を壊し、もう元には戻らない。
薬物は遠い世界の問題ではない。いつでも自分や愛する人に降りかかる問題だ、という意識を持ってほしい。その危険性を家庭で共有することが、一番の抑止力になる。