e企業の投資促進 研究開発や人材育成に重点を
- 2016.08.25
- 情勢/解説
公明新聞:2016年8月25日(木)付
日本経済の国際競争力を高めるためには、その主役である企業が将来を見据えた投資を積極的・戦略的に行うことが必要だ。その際は、建物や機械という「有形資産」だけでなく、研究開発や経営ノウハウ、社員の力など目に見えない「無形資産」に対する投資も重要になる。
経済協力開発機構(OECD)の報告書によると、先進国では有形資産よりも無形資産の方が経済成長に寄与する割合が高い。施設の老朽化を心配する必要がなく、他の分野への応用ができるからだ。
例えば、スーパーマーケットを効率よく運営・管理するシステムを一度開発すれば、チェーン展開する全ての店舗に活用できる。実際に、売り上げ予測を入力すると時間帯ごとに必要な人員数が分かるシステムを開発し、サービスの質と収益を継続的に向上させている企業がある。
欧米の先進国では、人材や技術をどれだけ蓄積しているかが、企業評価の大きなポイントとなっている。しかし、日本ではその重要性が十分に理解されていないためか、無形資産の投資額は欧米に比べて少ない。そのため、経済産業省は24日、無形資産に対する投資の拡大を促す有識者研究会の初会合を開いた。成長に必要な無形資産のあり方や、企業が長期的に投資を続けられる施策を検討していく。
研究会では人材育成の面に力を注ぐべきだろう。企業は2000年代に入ってから、社員向け教育訓練費用を大幅に縮減しているからだ。
実務を通じた教育訓練であるオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)が中心となった結果、IT(情報技術)スキルなど新たな能力の開発が行われにくくなった。設備や技術を導入しようとしても使いこなせる人がいない企業もある。IT大国として人材育成に力を入れる米国の取り組みを参考にするのも、一つの方法ではないだろうか。
特に、人材育成に資金を振り向ける余裕がない中小企業が積極的に投資できる施策が必要だ。投資減税に加えて、アドバイスをする専門家の派遣、地域の金融機関とのマッチングなども検討すべきだ。「企業は人なり」―。この経営哲学や手法を深める議論を期待する。