e「勤務間の休息」制度 "残業ありき"の発想 転換しよう
- 2016.08.31
- 情勢/解説
公明新聞:2016年8月31日(水)付
終電まで残業して帰宅は午前零時を過ぎる。朝は定時に出社してまた残業―。日本ではよく聞く話だが、こうした「残業ありき」の慣習を見直す時期に来ているのではないか。
長時間労働は従業員の心身に負担を掛ける上、男性の育児参加や配偶者の職場復帰の妨げとなり、年間10万人といわれる介護離職の要因にもなっている。長時間働いても日本の生産性はG7(先進7カ国)では最下位という調査があり、企業にとっても弊害が小さくない。
このため、来月から論議がスタートする政府の「働き方改革実現会議」では、「長時間労働の見直し」が論点の一つになっている。「勤務間インターバル(休息)制度」についての論議に注目したい。
勤務間インターバル制度は、企業従業員に対し、終業から翌日の始業までの間に一定の間隔を空けるよう求めるものだ。欧州連合(EU)では1993年に法制化され、勤務と勤務の間に11時間の休息を取るよう義務付けている。
既に国内でも同様の制度を採用している企業があり、社員の健康維持や生産性向上に役立っているという。従業員からも「毎日まとまった休息時間を確保できるので余暇が充実し、残業ありきの発想が変わった」などの声が挙がり、意識改革のきっかけになっている。
ただ、「繁忙期には人手の確保が必要」との企業側の要請や、「短期間に集中して業務に取り組みたい」と従業員が希望するケースもあることから、インターバルの時間を一律に義務付けることは難しいとの意見もある。
そこで、先行企業の中には、休息を11時間確保できない場合は8時間でも認めるが、8時間の休息が多い社員には産業医との面談を義務付けている会社もある。現場の実情に合わせ、さまざま工夫を重ねることが欠かせない。
公明党は、参院選重点政策で勤務間インターバル制度の推進を訴えた。政府の「ニッポン1億総活躍プラン」にも盛り込まれ、採用する企業への支援策を検討する方向だ。
長時間労働の是正に向け、「まずは休息時間から確保する」という発想から論議を進めることが重要ではないか。