eきょう防災の日 世界と共有したい災害の教訓
- 2016.09.01
- 情勢/解説
公明新聞:2016年9月1日(木)付
8月30日夜に上陸した台風10号の影響で記録的な大雨となった北海道と東北では、広い範囲で浸水被害が相次いだ。多くの市町村で避難指示や避難勧告が出され、少なくとも岩手県で11人の死者が確認されている。心からお見舞い申し上げるとともに、被災者への支援と被災地の復旧に努めたい。
台風の爪痕が残る中で迎えた、きょう1日は「防災の日」。1923年の関東大震災の教訓を後世に伝えて自然災害に対する認識を深め、防災体制を充実することの意義を確認するために制定された。
今回の台風被害についても検証を急ぎ、今後の防災・減災対策に反映させなければならない。死者のうち9人は高齢者グループホームで発見された。近くを流れる川が氾濫し、施設内に水が流れ込んだとみられている。災害弱者の避難体制や堤防の強化などが今後の課題となろう。
最近、過去の教訓を生かした対策の必要性を示す出来事があった。8月24日に発生し、290人以上が犠牲になったイタリア中部地震だ。震源地近くの町ノルチャでは、激しい揺れに襲われたが、死者がゼロだった。これに対し、震源地からほぼ同じ距離に位置する町アマトリーチェでは約230人の死者が出た。
どちらの町も石造りの歴史的な建造物が多い観光地だ。ノルチャが1979年と97年の地震で甚大な被害に遭った経験から建物の耐震化を進めたのに対し、当時、被害がそれほどでなかったアマトリーチェでは防災対策が進まなかった。倒壊した建物の手抜き工事や耐震偽装の疑いも浮上している。
自然災害が頻発し、東日本大震災を経験した「防災先進国」日本として、世界各国の災害対策に貢献できることがあるのではないか。
昨年3月の第3回国連防災世界会議の席上で発表された「仙台防災協力イニシアティブ」で、日本は途上国を中心に2018年までの4年間で計40億ドルの資金支援を行い、防災に関する技術や知識を提供する姿勢を打ち出した。こうした動きを強め、日本が持つ教訓を積極的に世界と共有すべきだろう。防災は世界が心を一つにして取り組むべきテーマである。