eコラム「北斗七星」

  • 2016.09.06
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年9月6日(火)付



「『新聞を参考に投票』7割」。先週、気になる見出しが目に飛び込んできた。記事は、7月の参院選で新聞読者の70.1%(複数回答)が、新聞を参考にして投票先を決めたことを伝えている。これに続くのは、政見放送以外のテレビ番組だが、40%にも届かない◆また、回答した読者の86.1%が実際に投票しており、全有権者の投票率54.70%(選挙区)を大きく上回った。新聞19紙の読者を対象にした共同調査で分かったもので、活字文化の旗振り役を自認する北斗子としては、少し胸を張りたくなる気分だった◆近代の民主主義政治を勝ち取る過程では、新聞が人々の啓蒙に大きな役割を果たした。議会と新聞は、デモクラシーの双生児と表現されるほどだ◆しかし、社会がますます複雑化する今、起こった出来事を追究するという姿だけでは、読者の心を引き留められない。社会に潜み、混在する情報の中から、何が問題で、どういう処方箋があるのか提示する責任も負う。その機能は、政治と相似形をなすはずだ◆「ジャーナリズムが歴史の最初の下書きならば、日々掲載される記事は、森の木を1本ずつ見て大まかに描いたメモでしかない」―かつて、ニューヨーク・タイムズが掲げた論説である。一つ一つの木に目を凝らしながら、森を見失わないように自戒したい。(明)

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