e大震災5年6カ月 「人間の復興」へ確かな行程表を

  • 2016.09.13
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年9月13日(火)付



列島を震撼させたあの日から5年6カ月が過ぎた。
東北太平洋岸の被災地では、防潮堤の整備や土地のかさ上げ、高台移転などが急ピッチで進み、新しい街の輪郭が見え始めている。遅れていた住宅再建も、災害公営住宅が計画の65%、高台での宅地造成も48%が完成するなど、一定のメドがつきつつある。
総じて、「ハードの復興」は当初の遅れを取り返し、日々に加速の度を増していると見ていいだろう。
問題は「ソフトの復興」「人の復興」だ。
長期にわたる避難所や仮設住宅での生活は、被災者の心と体を蝕み続け、もはや限界の域を超えている。その傷付いた命に、どう支援の手を差し伸べていくか。
この一点での取り組み強化こそ、"ポスト震災5年半"の最大テーマであることを強調しておきたい。
忘れてならないのは、あの日から5年以上を過ぎてなお、全国47都道府県に14万4000人もの避難者を数えるという現実だ(8月12日現在=復興庁調査)。うち約4万6000人がプレハブ型仮設住宅で暮らし、8万8000人が原発事故に伴い異郷での生活を余儀なくされている。このことに目をつむることも許されない。
その意味でも気掛かりなのが、時間の経過とともに進む震災の記憶の風化だ。
メディアの世論調査を見ても、被災地への関心は全国的に薄れる一方にあり、それが被災者の孤立感を深めていることが分かる。震災関連死が東北3県合わせて3400人余にも上っていることも、「風化」と無縁ではあるまい。
「人の復興」を加速させる原動力は、何にも増して広範な国民の支えと連帯であることを改めて肝に銘じたい。
無論、その先頭に立つべきは政治でなければならない。
そこで提案である。仮称「『人間の復興』総合支援計画」とでも題して、ハード面の復興計画同様、長期避難者の生活再建や心身の健康など、ソフト面の支援に関わるロードマップ(行程表)を作成し、これを図式化できないか。
想定される首都直下地震や南海トラフ地震への対応を考えても、この困難な作業への挑戦は無駄ではないはずだ。

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