e社会貢献型投資 財源の新しい芽を育てたい
- 2016.09.16
- 情勢/解説
公明新聞:2016年9月16日(金)付
急速な高齢化により膨らむ一方の社会保障費。その新たな財源確保策として活用できないだろうか。
「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」が今、注目されている。「社会貢献型投資」とも呼ばれるSIBは、投資家から資金を集め、金融機関が運用し、さまざまな公共サービスの費用に充てる仕組みだ。財政状況が厳しい日本にとって、検討に値する取り組みと言えよう。
SIBは2010年に英国で導入され、若者向けの就労教育で効果を上げている。
同国では、学校に通わず就職もしない若者が約100万人に上り社会問題化。生活保護費だけでも行政は大きな負担を強いられていた。とはいえ、協調性や職業技能を身に付けさせる事業を行おうにも、数兆円単位の予算投入が必要とされた。どちらにしても財政を圧迫することに変わりはない。
こうした中で、SIBを活用して就労支援に必要な財源を確保することができた。その大きな理由は、投資に対する見返りが期待できたからだ。この点がSIB活用のカギにほかならない。
英国の場合、就労支援策の実施によって働く若者が増加し、結果として生活保護費の支出が減少した。その一部を、投資家への報酬(配当)として支払っている。さらに、行政が行っていれば必要だったはずの人件費やその他の事務的な経費も不要となり、歳出削減につながったという。
日本でも厚生労働省が、貧困や失業といった社会問題を解決するモデル事業でSIBを活用する方針を決めた。また、日本財団が「特別養子縁組」の実証事業をSIBで進め、効果を検証している。公明党も「犬猫殺処分ゼロ実現」に向けた政府への提言で、犬猫を救済・保護する民間シェルターの整備と拡充に活用するよう求めている。
ただ今後、SIBを本格的に導入するためには、あらかじめ事業の採算を慎重に見極めることが欠かせない。見返りが期待できなければ、投資家は動きようがないからだ。また、見返りを追求し過ぎてサービス低下を招くような本末転倒があってはならない。
福祉財源の新しい芽を大事に育てていきたい。