e公明党全国大会 石田政調会長報告(要旨)
- 2016.09.20
- 情勢/解説
公明新聞:2016年9月19日(月)付
17日に開催された第11回公明党全国大会での石田祝稔政務調査会長報告(要旨)を掲載する。
【PDF】政策ビジョン「『新・支え合いの共生社会』の実現に向けて」(全文)PDFを開く
自公政権の取り組み
経済環境の改善を着実に推進
自公政権3年9カ月の取り組みと、今後2年間を見据えた政策ビジョン「『新・支え合いの共生社会』の実現に向けて」について、そのポイントをご報告させていただきます。
2012年12月に政権を奪還して3年9カ月。自公連立による安定政権のもと、中小企業支援や環太平洋連携協定(TPP)大筋合意と国内対策など、成長戦略・経済対策を着実に進めてきました。就業者数は240万人増加し、税収は21兆円増加しました。また、公明党が主張した政労使の取り組みにより賃上げが3年連続で実現するなど、民主党政権と比べ経済環境は確実に改善しています。
この間、公明党は、ネットワークの力と生活実感に根差した政策実現力の発揮に努めてきました。
東日本大震災からの復興では、全国会議員が被災地の担当となり"現場発"の政策を次々に実現し、与党としても6次にわたる政策提言を策定しました。
熊本地震の際には、被災者支援に全力を挙げ、補正予算とともに、義援金差し押さえ禁止法を速やかに成立へと導きました。
12年の衆院選で掲げた「防災・減災ニューディール」も着実に前進しています。
「人が生きる、地方創生」も公明党はネットワークの力で挑みました。統一地方選の重点政策へと反映し、プレミアム付き商品券などが着実に実現しています。
また、公明党は「一人ひとりが輝き活躍できる社会」へ、生活実感に根差した政策実現力を発揮しました。ブラック企業対策や若者雇用促進法、女性活躍推進法など、若者や女性の活躍を促し、50年近く訴えた18歳選挙権が実現。障害者差別解消法やヘイトスピーチ対策法も成立しました。児童扶養手当の拡充や幼児教育の負担軽減、学校耐震化など、子育て支援や教育にも力を入れています。政府の「ニッポン一億総活躍プラン」では、返済不要の給付型奨学金の創設など、実現に向け動き出しています。
生活者目線に立つ公明党が、特に存在感を発揮したのが社会保障と税の一体改革です。14年4月に消費税率を8%へ引き上げた際、高額療養費制度を見直し、約4060万人の負担を軽減しました。このほか、子育て支援の量的拡充と質の向上、難病の新たな医療費助成など社会保障を充実し、がん登録制度も開始しています。軽減税率は消費税率10%への引き上げ時に導入することが決まっています。
「平和の党」として存在感を発揮したのが平和安全法制です。日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、抑止力を高め紛争を未然に防ぐ「戦争防止法」として平和安全法制を整備しました。公明党は厳格な要件を設けて歯止めをかけるなど専守防衛を堅持しました。
以上、連立政権3年9カ月の取り組みをご報告いたしました。
政策提言の意義
一人ひとりが輝く社会めざす
次に、政策ビジョン「『新・支え合いの共生社会』の実現に向けて」の意義について申し上げます。
グローバル化により日本の経済は世界から大きな影響を受けています。また、国内では少子高齢化、人口減少が同時進行し、社会保障は大きな課題に直面しています。
公明党は、「誰もが、公平に良質な教育を受けることができ、使命と能力を開花することのできる社会」「正規雇用をベースとしつつも、多様な働き方が受容される社会」「ライフステージに応じた多様で豊かな人生を実現できる社会」をめざしています。つまり、格差が固定しない、一人ひとりが輝き活躍できる社会であり、住民が自発的に支え合う新たな「支え合いの共生社会」の構築を急がなければなりません。そのためにも過去に積み上げてきた社会保障制度の見直しとともに、大胆な経済対策や働き方改革、質の高い教育の実現に取り組む必要があります。
そこで、今後2年間を見据えて具体的に六つの柱を立て、公明党がめざす政策ビジョンをまとめました。
政策ビジョン
経済、社会保障、教育など6つの柱
1 成長と分配の好循環が隅々までゆきわたる日本経済の構築
一つ目の柱である「成長と分配の好循環が隅々までゆきわたる日本経済の構築」では、「生活者」に焦点を当て、生活を犠牲にしない「生活者優先の経済」の構築や、地域住民の暮らしとコミュニティーを守るための「生活の持続可能性」を確保すること、そして、将来にわたって活気ある温かな地域社会の構築を提案しています。
自公政権が進めるアベノミクスの経済効果は確実に表れています。しかし、地方や中小企業、家計においては、いまだ、十分に実感できていないとの声が聞かれます。
そこで提言では、女性や若者がさまざまな制度の制約によって活躍の機会を阻害されないよう、予算・税制を含めた所得再分配機能を強化し、特に子育て世帯、若者世帯への支援を充実するための制度改正を早急に進めていく必要性を指摘しています。また、ライフスタイルに合った働き方改革や、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボットを活用した「第4次産業革命」の実現などを訴えています。
こうした取り組みで、着実な賃金上昇を確保し、働き方・休み方改革によって可処分所得を拡大することで、国内消費を喚起し、内需を底上げする好循環を生み出します。
また一方で、深刻な人口減少問題と東京一極集中の加速により、地方と都市との格差が広がっています。そこで、長期的な視野に立ち、「人が生きる、地方創生」に全力を挙げて取り組みます。
このほか、日本の魅力を生かした観光立国戦略の推進や、安心して暮らせる住まいの確保と魅力ある住生活環境の整備、文化芸術の振興、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えたスポーツ立国の推進にも力を入れてまいります。
2 新しい支え合いの共生社会の実現へ
二つ目の柱である「新しい支え合いの共生社会の実現へ」では、社会保障給付費が増え続ける中で、一人ひとりが輝き活躍できる社会の構築が大きなポイントになっています。
社会保障の安定には、現役世代だけに過重な負担をお願いするのではなく、高齢世代であっても負担能力のある人には負担をお願いし、社会保障制度を支えることが求められています。
病院から地域医療へという大きな流れの中で、都道府県で策定が進められている「地域医療構想」と「地域包括ケアシステム」との一体的な取り組みが不可欠です。
特に、地域で暮らす住民が自発的に支え合う「互助」のネットワークを基盤とする「支え合いの共生社会」をめざします。「健康寿命」の延伸に加え、「活動寿命」を延ばす取り組みが不可欠です。生涯現役で元気に働き、地域に貢献していくことが求められています。その一方で、高齢者等の無年金者対策も重要です。年金受給資格取得期間の25年から10年への短縮を17年度中に前倒しで実施します。あわせて、低年金者に月最大5000円を支給する「年金生活者支援給付金」の早期実施も求めています。
また、一人ひとりが力を発揮し、活躍できる社会基盤の充実に取り組みます。
例えば、若者が安定した就労によって将来設計を描き、子育てや介護を抱えながら働くことのできる「働き方」の実現など、一人ひとりの状況に応じ、重層的に取り組みます。子育て世代に対しては、保育所整備をはじめ、社会全体で子育ての負担を軽減し、結婚や子育てに希望を見いだせるよう、抜本的な支援強化を進めます。
既存の社会保障制度の機能強化に加え、職場や地域における支え合いの体制づくり、保育・介護などのサービス基盤を支える人材の養成・確保に優先的に取り組みます。
3 多様な個性が生かされる教育の実現
三つ目の柱である「多様な個性が生かされる教育の実現」では、子どもの可能性を開く教育、そして「教育のための社会」の実現をめざします。
近年、家庭の経済的事情による格差が拡大しつつあります。貧困の連鎖を断ち切るためには、教育の機会均等を図ることが重要なカギとなります。「教育の無償化」を視野に入れた取り組みを検討すべき時に来ているのではないかと考えます。既に幼児教育の無償化が段階的に進み、小中学校は義務教育として無償であり、高校等も実質的に無償化されました。今後、大学の無償化に向けた検討を開始すべきと考えます。当面は、大学授業料の免除枠を拡大していくべきです。
そして、すべての子どもたちが大学等に進学するチャンスを保障する社会を実現するため、返済不要の給付型奨学金を速やかに創設します。また、無利子奨学金の拡充も急がなければなりません。
一方で、学校以外での学習支援の充実や、不登校の子どもたちが安心して学べる環境づくり、学力差に応じた、よりきめ細かな教育の実現も重要です。グローバル人材の育成にも力を注いでまいります。
4 防災・減災の地域づくりと復興加速化支援
四つ目の柱である「防災・減災の地域づくりと復興加速化支援」では、各地で想定を超える大規模な自然災害が発生し、16年においても、今夏の台風接近・上陸により北海道や東北地方を中心に、多くの人命が失われるなどの甚大な被害に見舞われ、安全・安心な国づくりが喫緊の課題となっています。
東日本大震災からの復興は、原発事故による風評被害と、震災の記憶の風化という二つの「風」を打ち破り、復興の取り組みを一段と加速しなければなりません。特に、福島の原子力事故災害からの復興は国が前面に立って進める必要があります。
また、公明党が提唱した防災・減災ニューディールによって、道路や橋、上下水道、学校施設などインフラの長寿命化・老朽化対策が着実に推進されており、引き続き社会インフラの総点検を進めながら計画的な補修・修繕、耐震化等が重要です。あわせて、上下水道や開かずの踏切対策といった生活密着型インフラの整備も進めます。
5 農林水産業に安心と希望を
五つ目の柱である「農林水産業に安心と希望を」では、農業はまさに国の基であることを確認しています。しかし、日本の農業を巡る状況は厳しく、TPPの大筋合意を受け、新たなステージへの転換点を迎えています。
公明党は農業経営の安定のために野党時代から訴えてきた、農産物の価格下落に対応する収入保険を創設し、中長期的なTPP対策を具体化していきます。農業就業者が減少・高齢化する中、農業の持続的な発展には、若者や女性など多彩な人材の活躍が不可欠です。担い手の育成やコスト削減、高付加価値化、輸出拡大、最先端技術の活用を進め、より魅力ある成長産業へ転換していきます。
農山漁村など地域の活性化へ日本型直接支払など地域政策の取り組みを拡大するとともに、地域の特性に応じた所得の向上を支援します。林業では国産材の供給・利用拡大や森林環境税の検討を進め、水産業では適切な資源管理のもと、所得向上や担い手の育成など成長産業化を図ります。また、食の安全性向上や食品ロス削減など食品政策を一層推進していきます。
6 国際社会の平和をめざして
六つ目の柱である「国際社会の平和をめざして」では、パワーバランスの激変で、国際的秩序の不安定さが増しています。わが国を取り巻く安全保障環境も一層厳しさを増しています。
多発する国際テロなど国家の枠組みを超える地球的規模の諸課題は、個々の人間の生存・生活・尊厳を脅かしており、人間一人ひとりに着眼した「人間の安全保障」の観点から、早急な対応が求められています。
一方で、公明党の取り組みが後押しとなり、オバマ米国大統領の被爆地・広島訪問が実現した今こそ、核廃絶への流れを強めるチャンスであり、確かなものにしなければなりません。「唯一の戦争被爆国」として日本の果たすべき役割を示し、国際社会との連携をつくり出していくことが極めて重要です。
多様化・複雑化する昨今の国際情勢の下では、もはやどの国も一国のみで安定した平和と安全を守ることはできません。国連をはじめ、世界各国と連携し、日米同盟を基軸とした外交の展開や近隣外交、経済外交などを発展させることが重要です。
公明党は、今後も積極的に対話による平和外交を積み重ね、国際社会の平和と安定に貢献してまいります。
以上、政策ビジョンのポイントを説明申し上げました。
まずは参院選でお約束した政党の生命である政策の実現をめざし、私自身が先頭に立って、全力で闘ってまいります。