e公明党全国大会での質疑(要旨)

  • 2016.09.20
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年9月20日(火)付



17日の第11回公明党全国大会で、代議員として参加した地方議員の質問と、それに対する党幹部の答弁の要旨を紹介する。



災害対策

党のネットワーク生かし自治体間の連携を強化

城下広作代議員(熊本県議) 熊本地震で被災した財政力の弱い自治体は追加支援がないと苦しい。復旧・復興の途上で台風被害にも遭った。度重なる災害で困窮する自治体への財政支援をどうするか。

今夏は、台風による記録的な豪雨によって各地で甚大な被害が発生したが、水害対策についてどう考えているか。このほか、公明党が推進してきた「防災・減災ニューディール」について、今後の取り組みを聞きたい。

井上義久幹事長 26日から行われる臨時国会に提出予定の今年度第2次補正予算案に、被災地の要望を踏まえて活用できる「復興基金」の創設が盛り込まれており、速やかに成立させたい。併せて、予備費も活用しながら、自治体のニーズに対応していきたい。

水害対策は抜本的に見直さなければならない。ハード面では、まちづくりと一体的な治水対策や高台整備、堤防などの強化を進めたい。ソフト面では、災害発生時の自治体業務を支援する「被災者支援システム」の普及などだ。最近の水害は自治体の枠を超えており、河川の流域ごとのタイムラインの作成などが不可欠であり、公明党のネットワークを生かした近隣の市町村との連携も重要だ。

「防災・減災」については、自治体の庁舎や地域の防災拠点となる学校の非構造部材を含めた耐震化を推進していく。このほか、災害に強い公衆無線LANの設置やマンホールトイレ、下水道管路の整備・普及など、地域防災力の向上を進める必要もある。



成長と分配の好循環

中小企業支援や下請け対策、働き方改革で実現へ

高田好浩代議員(静岡県議) 自公政権の財政・金融政策により、大企業を中心に業績は改善している一方、現場を回っていると、中小・零細企業、地域全体まで雇用環境や景気の改善を感じるのは難しい。今回、政策ビジョンで「成長と分配の好循環が隅々までゆきわたる日本経済の構築」が示されたが、地域の発展と生活の豊かさ、経済成長を実感できるよう、具体的な成長戦略のロードマップ(工程表)を示してもらいたい。

最低賃金の引き上げに苦しむ中小企業も多い中、投資活動の促進と賃上げへの支援をどのように行っていくのか。また、働き方改革は具体的にどう展開していくのか。

石田祝稔政調会長 「成長と分配の好循環」実現へ、特に成長の果実をどう分配していくかが重要だ。公明党らしい政策をつくり上げていきたい。成長戦略について、6月に閣議決定した「日本再興戦略2016」を3年間実施していくが、進捗状況を確認し、国民の声を聞きながら進めていきたい。

この3年間で最低賃金は約60円上がったが、確かに中小企業は引き上げに大変な思いをしている。中小・小規模事業者の負担を軽減するため、今年度第2次補正予算案では、従業員の処遇改善を行う場合に補助金を出せる仕組みをつくった。下請け対策にも真剣に取り組んでいく。働き方改革は地方創生、1億総活躍と併せて取り組む。公明党として10月にも検討会議を立ち上げ、その中で地方議員の声を聞きながら進めていきたい。



平和外交

政党外交のウイング広げ各国と核廃絶などで連携

碓氷芳雄代議員(広島市議) 今年5月には、公明党も長年働き掛けてきた、米国のオバマ大統領の被爆地・広島訪問が実現した。「核兵器のない世界」を実現するため、今後も各国の政治指導者が広島や長崎を訪れ、被爆の実相に触れてもらうことが重要だが、そのための環境をどのように整えていくのか。

先日の党中南米訪問団によるキューバ、コロンビア、パナマの3カ国の歴訪は、党の平和外交の新たな歴史を刻んだと高く評価している。今後の党の外交方針を伺いたい。

山口那津男代表 党として、あらゆる場面を通じて、各国の政治指導者の被爆地訪問を呼び掛けたい。私自身、中南米を訪問した際、さまざまな政治家とやり取りする中で、政治指導者の広島や長崎への訪問を働き掛けた。

また、国内での被爆体験などの人から人への伝承の継続、画像や映像での記録保存、被爆遺構の保存に向けた取り組みも、被爆の実相を世界に伝えるためにも重要だ。

中南米訪問については、キューバは米国と国交を回復したばかりであり、コロンビアは、半世紀以上に及んだ内戦が、キューバの仲介で和平合意に至ったばかりだ。こうしたタイミングでの訪問は意義深い。キューバは北朝鮮とも友好国であり、東アジアの平和と安定、核廃絶の推進のための働き掛けをキューバに強く訴えた。今後も中国や韓国との関係改善に注力するとともに、中南米やその他の地域にも政党外交のウイングを広げていきたい。



貧困問題、教育格差の是正

「ひとり親家庭」への学習支援、奨学金制度を拡充

篠原公子代議員(長野・軽井沢町議) 所得格差の拡大や子どもの貧困問題への対応が遅れているとの指摘がある。「貧困の連鎖」を断ち切り、格差の固定化を防ぐために教育格差の是正が重要だ。

「ひとり親家庭」「生活困窮世帯」に対する学習支援を強化すべきだ。小さな自治体では、全てをボランティアに委ねることは困難である。人材と場所を確保し、新たな事業を立ち上げるため、どのような国の支援があるのか。また、さらなる教育の無償化や奨学金制度の拡充にどう取り組むのか。

石田政調会長 地域レベルでの学習支援については、放課後児童クラブなどの終了後の学習支援と居場所づくりをはじめ、家庭での学習習慣が十分に身に付いていない中学・高校生などを対象にした「地域未来塾」、児童養護施設や「生活困窮世帯」への学習支援、「ひとり親家庭」に対する訪問・派遣型の進学相談などが行われている。さらに取り組みを強化していく。

教育の無償化では、幼児教育での段階的な実施に加え、「高等学校等就学支援金」の支給などにより高校などでも実質的に進んでいる。その上で、今後は大学の無償化について検討を始めるべきだ。当面は大学授業料の免除枠の拡大を進めていきたい。

給付型奨学金は今年度中に制度設計することが確実になってきた。無利子奨学金の成績要件の撤廃や、受給要件を満たしているのに予算の関係で受けられない「残存適格者」の解消などにも取り組む。



党勢拡大

積極的な広報活動で党の考えや取り組みを発信

谷井勲代議員(兵庫県議) 幹事長報告で、来年夏の東京都議選や統一外地方選、次期衆院選の勝利が呼び掛けられた。8月の東京都知事選いらい、東京の話題が報じられているが、都議選への影響や見通しを聞きたい。私の地元・尼崎市は来年6月に市議選、そして衆院選小選挙区・兵庫8区の戦いがある。次期衆院選の見通しも併せて伺いたい。

さらなる党勢拡大、次の勝利に向け、日常の党活動や議員活動はどうあるべきか。

井上幹事長 都議選に向けて公認作業を進めている。来夏の都議選から公明党現職のいる中野、北両区の定数が減り、さらに築地市場の問題をめぐって都民の関心は高く、都議選も投票率アップが予想され、極めて厳しい選挙戦になる。北九州市や静岡市などの政令市議選はじめ大型の地方選挙がめじろ押しだ。力を合わせて勝利したい。衆院は年末で任期4年の折り返しになるので、常在戦場の構えを強くしていきたい。

参院選で公明党は「政治の安定」と「希望がゆきわたる国」を訴えた。政治の安定に果たす公明党の役割に対する国民の期待は大きかった。その意味で、公明党が今、何を考え何に取り組んでいるかを知ってもらうため、積極的な広報活動で有権者との接点を持つことが大事だ。「希望がゆきわたる国」の実現へ、国民が公明党に期待するのは、地域の声が党のネットワークを通じて政治に反映されることだ。地域に張り巡らされたネットワークを強化していきたい。



憲法論議の方向性

国会の審査会で何をどう議論するかを深めるべき

田村佳子代議員(茨城県議) 先の参院選でみられたように、現行憲法を否定するような一部の人々と公明党が同一視されるようなことがあってはならない。改めて公明党の憲法論議の方向性を明確に示してほしい。野党側は「改憲勢力が3分の2を取ったら安倍首相は必ず9条を変える」などと不安もあおった。9条に対する見解も改めて示してほしい。

山口代表 「改憲勢力3分の2は許さない」とのキャンペーンは全く意味がない。野党の民進党も憲法改正を否定していないため、「改憲勢力3分の2」は、はるかに超えていた。

むしろ、何をどのように議論するのかが大事だ。

公明党は「加憲」の立場である。今の憲法を高く評価し、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義の3原理は今後とも堅持する立場だ。戦後70年を経て、憲法にふさわしい新しい価値が形成されていれば、新しい規定を設けて憲法に加えることは否定しない。しかし、どの項目について加憲すべきかの議論は成熟していない。

基本的な議論を党内でした上で共通認識を得て、国会で議論を深めたい。

公明党は9条の1項、2項は堅持する。自衛権行使については、平和安全法制の新3要件が、生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される場合にのみ例外的に許した。これで9条の下での自衛権行使の限界が示された。この平和安全法制を自ら否定するような議論はしない。


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