e障がい者支援 地域で見守る流れ維持すべき

  • 2016.09.20
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年9月20日(火)付



障がいのある人を孤立させず、地域の中で暮らしていける社会をめざす。その流れを逆行させてはならない。


今年7月、相模原市の知的障がい者施設で19人の入所者が刺殺された事件で、措置入院をめぐる対応を検証している厚生労働省の専門家チームが、中間報告を発表した。


措置入院とは、精神疾患によって本人や他人を傷つける恐れがある人を、本人の同意がなくても強制的に入院させるもの。中間報告では、措置入院が解除され容疑者が退院した後の対応に関し、継続的な医療支援などについて病院や市の対応が不十分であったと指摘している。


事件の再発を防ぐ上で、措置入院が解除された後の支援のあり方が改めて浮き彫りになったことを重視したい。秋をめどに取りまとめられる再発防止策の焦点である。


この点について、既に独自の取り組みを始めた自治体もある。兵庫県では今年4月、健康福祉事務所に職員や保健師、専門医らで構成する「継続支援チーム」を設置した。患者自身の退院後の通院先をどこにするかや患者の家族が抱える不安など地域に戻る際の課題を患者や家族と措置入院中から話し合い、退院後の支援策に反映させて担当の保健師らが見守りを継続する。


地域での生活を安定させることを目標としたものであり、関係者による見守りが、住民の不安解消につながる効果も期待される。


一方、障がい者や高齢者が入所する社会福祉施設の安全管理も重要な論点だ。


事件を受けて厚労省は、緊急事態発生時に施設利用者を動揺させずに情報を伝達できる合言葉といった「職員の共通理解」などに関する点検項目を全国の施設に通知した。


施設と地域社会の壁はできるだけ低いことが望ましいが、安全確保との両立は容易ではない。引き続き議論すべき課題であろう。


中間報告は、「事件は極めて特異で、精神障がい者に偏見や差別の目が向けられることが断じてあってはならない」と総括したが、その通りである。精神障がい者が病院や施設だけに頼らず、地域社会に受け入れられる環境づくりを、いっそう進めていかなければならない。

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