e難民申請、過去最多 日本は教育支援などで貢献を

  • 2016.09.23
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年9月23日(金)付



深刻な人道危機を直視し、知恵を絞って有効な手を打ち続けなければならない。

経済協力開発機構(OECD)によれば、2015年の加盟国への新規難民の申請件数は165万人と前年からほぼ倍増し、過去最多を記録した。内戦や紛争で住まいを追われた人々は全世界で6500万人を超える。シリア問題などの影響で中東やアフリカから大量の難民があふれ、状況は「第2次世界大戦以降、最も深刻」と形容される。誠に憂慮すべき事態だ。

未曽有の事態に対して安倍晋三首相は19日、難民と移民に関する初の国連サミットで、人道支援や受け入れ国支援に3年間で総額28億ドル(約2800億円)を拠出する方針を表明した。

これまで日本は緊急的な人道支援に並行して、農業用水路の敷設など難民の自立や受け入れ国の経済発展に向けた開発支援を進め、実績を上げてきた。今回も、必要とされる支援が速やかに現地に行き届くよう求めたい。

一方、難民受け入れの旗振り役だったドイツで、「反難民」を掲げる政党が直近の州議会選挙などで躍進した例が象徴するように、中東や欧州の受け入れ国側の負担や国民の不安は限界に達しつつある。このため、サミットで採択された「ニューヨーク宣言」は、各国による「責任のより公平な分担」に言及した。国際社会が団結して難民支援に取り組むため、日本は主導的役割を果たすべきだ。

教育などソフト面での貢献も求められる。シリアの隣国レバノンでは、日本が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協力し、シリア難民や地元の若者に職業訓練を提供している。紛争やテロの温床となる貧困や格差から人々を守るには、こうした「人間の安全保障」に立脚した支援の充実は不可欠であろう。

公明党の提言を踏まえ、既に政府はシリア難民を留学生として5年間で最大150人受け入れる方針を決定しており、安倍首相は20日、来年からの実施に加え、留学生の家族も受け入れる意向を明らかにした。現地情勢が混迷の度を深める中、母国の将来の平和と繁栄を担う若者が日本で安心して学べるよう配慮を尽くしたい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ