e参院予算委員会での公明党の質疑(要旨)

  • 2016.10.07
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年10月7日(金)付



6日の参院予算委員会で、公明党の西田実仁参院幹事長、横山信一氏が行った質疑(要旨)は次の通り。


西田実仁参院幹事長


経済再生


中小企業の賃上げ重要
下請け取引、継続的に調査せよ


西田実仁氏 第2次補正予算案の財政効果は。


安倍晋三首相 今回の補正予算案は、先般、閣議決定した経済対策に基づく。今回の補正予算案を含め、経済対策に基づく予算措置で、短期的には実質GDP(国内総生産)の押し上げ効果は、おおむね1.3%と見込まれる。


西田 経済再生の目下の最大の課題は消費の回復をどう図るかだ。中低所得層の消費回復では、公明党が強く主張した、いわゆる簡素な給付措置、臨時福祉給付金に3673億円計上された。補正予算案の成立後、できるだけ早く、確実に対象者の手元に届くようにしてもらいたい。


塩崎恭久厚生労働相 確実な支給に向け、対象者個々に申請を促すよう市町村に働き掛ける。テレビCMなどでも広報する。


西田 中間層の所得底上げには、中小企業の賃上げが重要だ。賃上げを後押しする支援策を、どう拡充したのか。


厚労相
中小企業の賃上げを後押しするキャリアアップ助成金は、従来は2%以上の賃上げが対象だったが、3%以上の賃上げを行った場合、さらに新たな加算を行う。業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金を時給で60円以上引き上げる場合のみを対象としてきたが、30円以上引き上げる場合も対象とする。


西田 下請け企業の経営環境の改善が最も大事だ。政府の後押しで随分改善されたが、しばらくすると(親事業者の)担当者が替わり、「原価を低減させろ」などとぶり返す。継続的な調査や注意喚起が大事であり、どう改善していくのか。


世耕弘成経済産業相 公正取引委員会と協力して、下請代金法の運用基準改正を図る。下請振興法の基準や手形取引も通達を見直す。必要な規定の見直しを年内を目途に実施する。こういった取り組みは継続的に行い、公正な取引の結果、アベノミクスの果実が地方の中小企業に行き渡るよう取り組む。


地方創生


広域連携の仕掛けつくれ
交流や技術革新の加速に不可欠


西田 首相は所信表明演説で、リニア中央新幹線の全線開業を最大8年前倒しする決意を示し、東京と大阪をハブ(拠点)として全国を一つの経済圏に統合する「地方創生回廊」を整えるという新たな提案をした。リニアの効果は。


石井啓一国土交通相 地方から、東京、名古屋、大阪という三大都市圏にアクセスする際の利便性が飛躍的に向上し、地域活性化の可能性が高まる。


西田 三大都市圏と地方の橋渡しとなる広域連携の仕掛けがなければ、交流や新しい技術革新が進まない。埼玉では、北陸、東北、北海道の新幹線の結節点になる大宮駅を玄関口に沿線都市と東京圏を融合させるというプロジェクトが進行している。広域連携をどう進めるのか。


国交相 今年3月に策定された全国八つの広域地方計画には、116の広域連携プロジェクトが盛り込まれている。取り組みを加速するため、来年度予算案の概算要求で必要な経費を要求している。埼玉のプロジェクトは地方創生の実現へ、大変重要だと認識している。


西田 地方創生交付金の運用では、どのように工夫しているのか。


山本幸三地方創生担当相 同交付金の中には、地域間連携・広域連携を条件とするものがある。複数の自治体が予算を共同で実施する場合のみを地域間連携と認めていたが、今年4月から予算の共同実施以外で連携することも広く認める形で弾力化した。


西田 東京だけでなく、"日本列島全員野球"で強い日本をつくる。これこそ首相が述べる地方創生回廊ではないか。


首相 都市と都市をつなぐことは、間違いなく大きな相乗効果がある。リニアの全線開業で世界最大の都市圏が形成される。大事なことは、その効果を地方に波及させ、日本全体で成長することだ。地方創生回廊をつくり上げ、地方に成長の大きなチャンスを生み出していく。


子ども食堂


多世代型サロンの応援も
家庭の問題、早期把握へ体制必要


西田 子ども食堂は、(親が多忙や経済的な理由などで一人でいる子どもに対して)単に食事を提供するのみならず、学習支援や居場所づくりにおいてニーズが高まっている。子ども食堂を運営する社会福祉協議会から話を聞いたが、何が必要かということを子どもから発信することはなく、ニーズの把握が大変に難しいということだ。例えば、学校や保育所にソーシャル・ワーカーがいれば、状況も把握しやすいという話もあった。地域の中で養育に問題のある家庭の早期発見ができるよう環境整備を進めていくべきだ。


加藤勝信1億総活躍担当相 学校や子育て世代包括支援センターなどの多様な関係者が連携・協力し、子どもたちに確実に支援を届けていくことが必要だ。そうした観点から、地域ネットワークを形成する自治体の取り組みを支援する「地域子供の未来応援交付金」を第2次補正予算案に計上した。交付金を活用して心理カウンセラーなどを配置して、福祉、教育関係者と情報共有しているところもある。(活用には)まずネットワークをつくってもらい、先行的な取り組みを実施してもらいたい。


西田 一人で寂しく食事をする「孤食」の問題を抱えているのは、一人で住む高齢者も同じだ。孤食のお年寄りと子どもが一緒になって、多世代で食事をする地域サロンも応援してもらいたい。


1億総活躍担当相 子どもたちに温かな食事と団らんのある居場所を提供して、必要な支援につなげることで「貧困の連鎖」を断ち切る取り組みであれば、高齢者を支える形で運営する子ども食堂も当然、支援の対象になる。


横山信一氏


水道の耐震化


工事の信頼性確保が課題
更新制導入し不適格業者を排除


横山信一氏
経済対策では、上下水道の整備など生活密着型インフラの整備を地方創生の推進に位置付けている。上下水道施設の耐震化対策は地域経済への波及効果が期待できる。


首相 補正予算案に耐震化支援として400億円を計上している。雇用など需要を創出し地域経済が下支えされるだけでなく、安全な水の供給を将来にわたり確保することで、地域での安定的な経済活動を可能とし、地域活性化につながる。


横山 地域経済への波及には課題もある。その一つが水道事業者が給水装置工事の施工業者を指定する制度だ。2013年の厚労省アンケートによると、所在不明の工事事業者が約3000、違反行為件数が年間1740件、苦情件数が年間4864件などと、問題も明らか。更新制が導入されれば、不適格事業者が排除され、工事の信頼性が確保されるため、地域経済への波及効果も出てくる。また、地方では、人口減による給水人口や料金収入の減少に直面し、水道事業の持続性確保は喫緊の課題だ。


厚労相 厚労省の厚生科学審議会で更新制導入のほか、広域連携の推進、適正な資産管理などについて議論しており、年内をめどに取りまとめる。


台風被害の支援策


営農意欲持てる支援を
北海道、治水対策の見直し急務


横山 台風による集中豪雨は、各地に甚大な被害をもたらした。北海道では、畑作物の農業共済制度の対象外となる作物への被害も甚大だ。専業農家が中心の北海道では、営農できなければ減収となり、離農に拍車を掛けることになる。被災農家が生活を維持し、営農継続に引き続き意欲を持てる支援が必要だ。


山本有二農林水産相 一刻も早い営農再開へ、現場のニーズを踏まえてキメ細かく取り組む。河川の決壊により表土が流失した農地に対して、河川の土砂を基盤部分に活用するなど農業者の負担軽減に配慮した工法による復旧を支援する。


横山 北海道の耕地面積は全国の26%を占める国内最大の食料基地。今回の災害が食料自給率の低下を招かないよう、迅速で柔軟な対応が必要だ。


首相 厳しい冬を迎える前に、可能な限り被災農地の復旧を図ることは大変重要な課題だ。できることは全てやるとの考え方のもと、被災農地の農産物の供給力の再生を図っていく。また、新規就農者の意欲こそが農業の未来につながる。しっかり支援したい。


横山 サケの増殖事業が盛んな岩手県では、東日本大震災で壊滅的な被害を受け、今回の台風被害に遭った。今後、どのような支援を行っていくのか。


農水相 被災を免れた、ふ化・放流施設における稚魚の生産拡大への支援を実施し、一日も早い復旧・復興に努めていく。


横山 今後、風水害や土砂災害の激甚化が懸念される。北海道における治水対策の見直しが必要だ。


国交相 北海道と共同で有識者からなる検討委員会を設置し、今回の災害を検証するとともに、今後の治水対策のあり方を検討する。年度内には結果を取りまとめる予定だ。


横山 米海軍や自衛隊の艦艇が共同して災害救援活動などを行う、パシフィック・パートナーシップについて、日本はどのような役割を果たすのか。


首相 自衛隊艦艇の持つ医療機能を効果的に活用することで顔の見える国際貢献を実施し、地域の安定化に寄与する意味で重要な施策だ。今後も、国際緊急援助活動など、国際協力の現場で積極的に貢献していきたい。


生活再建のための援護資金は無利子化すべき


横山 被災者支援には、災害弔慰金と並行して設けられた貸付制度に災害援護資金がある。貸付限度額は350万円。利率は3年間、無利子で据え置きだが、その後は3%だ。生活再建のためなのに3%は非常に高い。利子は市町村の運営事務費に充てられているが、熊本地震の時には熊本県から、今般の台風災害では北海道東北地方知事会から無利子化を求める要望が出ている。被災者に寄り添う制度にするため、無利子化し、運営事務費も新たな手当てを検討すべきだ。


松本純防災担当相
市町村の実態を調査した上で、3%が妥当かどうかも含めて、関係団体の意見を聞きながら検討したい。

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