e原産国表示 全加工食品への拡大、丁寧に
- 2016.10.07
- 情勢/解説
公明新聞:2016年10月7日(金)付
レトルト食品やケチャップ、ソーセージと、食卓に欠かせない加工食品。消費者が安心して口にできるよう、原産地の「見える化」を着実に進めたい。
今は一部にのみ義務付けられている加工食品に関する原材料の原産国表示について、消費者庁と農林水産省は5日、対象を原則として国内で製造する全ての加工食品に広げるとした素案を有識者検討会に提示した。
現在、生鮮食品は全て原産地表示が義務付けられているが、加工食品では野菜の冷凍食品など全品目の2割程度にとどまる。今回提示された素案は、これを全品目に拡大するものだ。具体的には、製品に占める重量の割合が最も大きい原材料のみの原産国表示を原則として義務付けるとしている。
今後、環太平洋連携協定(TPP)が発効すれば、外国産の農産物や食品の輸入増加が予想される。食の安全に対する関心が高まる中、原産国表示の対象が拡大されることは、消費者の不安を解消する上で大きく役立つに違いない。今回の素案について、生産者団体や消費者団体も「商品の適切な選択に役立つ」と、おおむね歓迎している。
一方、事業者側の懸念は小さくない。中でも複数の外国産の原材料を切り替えながら使用している事業者団体からは、「対応が難しい」「コストが増えて経営悪化につながる」といった声が上がっているという。
このため素案では、1カ国のみを特定した表示が難しい場合、例外的に「A国またはB国」「輸入」といった表示を認める考えも示している。消費者のニーズに応えるという前提は崩してはならないが、効率的な表示方法の設定を通して事業者の負担を軽減し、実現可能で無理のない制度とすることも考慮する必要があろう。
現場の声に真摯に耳を傾けながら、さらに知恵を絞ってもらいたい。
事業者が混乱しないよう、制度の骨格が固まり次第、丁寧かつ速やかな周知徹底も必要となる。表示ルールの変更に伴う負担感が比較的大きいと予想される中小企業・小規模事業者への支援策も検討する必要があろう。