eサイバー攻撃 東京五輪への対策は大丈夫か

  • 2016.10.12
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年10月12日(水)付



2020年に開催される東京五輪のサイバー攻撃対策を強化するため、警視庁は今月、インターネット事業者や、鉄道、電力などのインフラ事業者との合同会議を初めて開いた。官民の連携で被害防止に努めてもらいたい。

コンピューターやネットワークに不正に侵入して被害を与えるサイバー攻撃は、世界的に生活や経済活動に深刻な影響を及ぼす脅威となっている。ウクライナでは昨年12月、電力会社が標的となり、大規模な停電が引き起こされた。世界経済に与える損失は年間で53兆円との調査もある。

特に標的となりやすいのが大規模イベントだ。12年のロンドン五輪では期間中、約2億1000万回の攻撃を受けたという。ICT(情報通信技術)を生かした「おもてなし」を掲げる東京五輪では、より多くの攻撃が行われるとみられる。

選手のドーピングを隠すためにデータを改ざんする。大量のチケットを管理する電算システムの機能を停止させ、大会運営を混乱させる。こうした犯行を許さぬよう、万全の体制を築くべきだ。

サイバー攻撃の目的は、特定の思想に基づくものから金銭的な要求まで多様であり、標的になること自体を避けるのは難しい。その中で、どのように被害を防ぐか。強靱なシステムの構築はもちろんだが、サイバー攻撃は日進月歩で巧妙化している。国内に不足するサイバーセキュリティー人材の育成が急務だ。

このため国は、サイバーセキュリティーに関する国家資格である「情報処理安全確保支援士」制度を創設。来年度から試験を実施し、20年までに3万人超の有資格者を確保する。また、東京五輪の運営システムを模した演習システム「サイバーコロッセオ(仮想競技場)」を構築し、サイバー攻撃に備えた実践的な訓練も行う。人材育成へ必要な手を全て尽くすべきだ。

過去の取り組みも参考にすべきだろう。ロンドン五輪では、情報を扱う人数を限定したり、システムの設計段階からセキュリティー対策を盛り込むなどした結果、深刻な被害を起こさずに済んだ。

東京五輪まで残り4年を切った。限られた時間の中で実効性ある対策を求めたい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ