eコラム「北斗七星」

  • 2016.10.18
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年10月18日(火)付



身辺雑記で恐縮だが、ある日の夕食時、「ずっと元気でいて......」と言う妻の口から続いて次の言葉が飛び出した。「ごみ捨てをする人がいなくなると困るから」。一瞬目が点になったが笑って突っ込んだ「本音!?」◆<その人のそばにいるだけで、何かこう気持ちがやわらかくなって、あーこの人を幸せにしてあげたいなーと思う。この人の幸せのためなら俺はどうなってもいい(略)。それが、愛よ>◆昭和の映画『男はつらいよ』で聞いた、こんな寅さんのせりふがあったっけ。自分より相手を思いやる気持ちということだろう。それを歳月がうまく味付けする夫婦の会話◆それで思い出すのが『明日に向って101の愛の言葉 秋田県二ツ井町編』(恒文社)で読んだ一文「恍惚の日日」。夫が、長い年月にわたり介護してきた認知症の妻への思いをつづったものだ。次のくだりが忘れられない◆「日に何度となく、慣れた手つきでおむつを当ててやる私。ときおり、その手のひらにあなたは、ちょろちょろと熱い尿を洩らす。そのような姿をまのあたりにしながらあなたを介護していると、いたわりとかやさしさとかの本当の意味が、あなたが病気になる前よりも、かえって深まったように思う」◆<秋灯や夫婦互に無き如く>高浜虚子。この時季思い出す句だ。(六)

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ