e公認心理師 悩みに寄り添う頼れる存在に

  • 2016.10.21
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年10月21日(金)付



学校でのいじめ、勤め先でのパワハラ、子育てや介護の心労、重病を患ったショック......。心が傷ついて生きるのが嫌になってしまいそうな時、安心して相談できる存在がほしい―。

悩みや不安を抱えた人の心のケアを行う、新たな国家資格「公認心理師」。公明党などの推進で昨年9月に関連法が成立し、養成カリキュラムの検討が進められており、2018年に第1回の試験が実施される予定だ。

心の病のある人は100万人を超え、深刻な社会問題になっている。心の健康をサポートする質の高い人材の確保が求められる中、新たに誕生する公認心理師の役割は極めて重要といえよう。

現在、心のケアを担う心理職には「臨床心理士」や「臨床発達心理士」といった民間資格しかない。心理職の資格は数十に上るといわれるが、試験の難易度や実務訓練の有無もさまざまで玉石混交だ。ケアを必要とする人から、どの資格者に依頼すべきか判断に迷うという声も聞かれる。

このため、国家資格として厳格な取得要件を設けることで、専門的な技量が一定レベルに達していることを保証し、安心して心のケアを受けられるようにするのが新制度創設の目的の一つである。

医療現場でも、心理職に国家資格がないことが難点とされていたが、公認心理師の誕生は、医療専門家と連携して治療やケアを行う「チーム医療」などで、より質の高い医療の提供につながると期待される。

ただ、新たな資格を定着させる上での課題もある。学校でのいじめ相談、犯罪被害者のカウンセリング、被災者の心のケアなど、心理職の活躍の場は広がり続けている。しかし、その多くは非常勤として働いており、高度な能力を持っていても安定した収入を得られていない。そのため、複数の職場を掛け持ちする人も少なくない。

公認心理師の創設により、心理職の社会的評価の確立が期待されるが、それとは別に待遇の改善を進める必要があるのではないか。技能や知識が適正に扱われるようにしてこそ、優秀な人材が集まり、心理職全体の質が向上することを指摘しておきたい。

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