eコラム「北斗七星」

  • 2016.10.31
  • 情勢/社会

公明新聞:2016年10月29日(土)付



映画評論家の故・淀川長治氏が「世界一」と評した映画館が山形県酒田市にあった。伝説の映画館「グリーンハウス」は、40年前のきょう、灰じんに帰した。そこを火元に広がった炎は街を焼き尽くした。「酒田大火」である◆携帯電話もない当時、有線電話も通じない中、情報収集で威力を発揮したのがアマチュア無線。市の災害対策本部に逐一、火災や避難所の状況が入り、適切な情報が発信できたという。東日本大震災でもアマチュア無線が救援活動で活躍したが、多様な通信手段の確保は不可欠だ◆酒田大火は10月30日に鎮火。残り火くすぶる翌31日には国、県、市の合同プロジェクトチームが結成され、わずか2日間で復興都市計画の原案が完成する。仮設住宅は11月1日に着工し、同22日から入居開始。正月返上で行われた復興事業は、2年6カ月のスピードで仕上がった◆この「酒田の復興」は、阪神・淡路大震災の復興都市計画のモデルとなった。公明党の赤羽一嘉衆院議員は、先の衆院予算委員会で、「酒田大火」を例に挙げながら、被災自治体の初動対応を支援するための専門家集団の必要性を提案した◆<苦い経験の記憶がいつまでつづき、この心掛けがいつまで忘れられないでいるか>とは寺田寅彦の言葉。過去の災害に学び、未来の防災へ備えたい。(川)

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