e国際課税新方針 税逃れ阻止へ着実な実行を
- 2016.10.31
- 情勢/解説
公明新聞:2016年10月31日(月)付
富裕層の課税逃れを暴露した「パナマ文書」報道をきっかけに国境を越えた租税回避への関心が高まる中、国税庁が国際課税の強化に向けた新たな方針を公表した。
海外取引をする企業の課税逃れや富裕層の資産隠しを監視する体制を整備し、「国際課税上の課題に積極的に対応できる仕組み」を構築する。まじめな納税者が馬鹿を見ぬよう、着実に実行に移していってもらいたい。
「国際戦略トータルプラン」と題した新方針は、(1)情報収集の強化(2)専門的な体制の拡充(3)外国当局との協力―の三つの柱からなる。
このうち情報収集については、海外に5000万円超の資産を持つ人に提出を義務づけている「国外財産調書」などを活用して、海外との送受金や海外資産の実態を把握。
専門体制の拡充では、現在は東京、大阪、名古屋の国税局にしか置かれていない「重点管理富裕層プロジェクトチーム」を来年7月以降、全国に広げる。
さらに外国との協力については、経済協力開発機構(OECD)が策定した国際的なルールなどに基づき、海外資産を持つ企業や富裕層の金融口座情報を各国税務当局との間で自動的に交換する制度を導入する。2018年秋までにはスタートさせる予定だ。
国税庁が国際課税の強化に乗り出すのは、経済社会のグローバル化を背景に、タックスヘイブン(租税回避地)や各国の税制の違いなどを利用した過度な節税や課税逃れが世界的に増加しているためだ。わが国でも、海外子会社を使った企業の課税逃れが問題となっている。
違法ではないとはいえ、本来納められるはずの税金が流失する事態を看過するわけにはいかない。公平・公正さに欠け、貧富の格差拡大を助長することにもなる。
遅きに失した感は拭えないものの、国は新方針に基づく施策を早く軌道に乗せ、悪質な租税回避の追放に全力を注いでほしい。
ただ、課税強化が企業の自由な経済活動を萎縮させたり、競争力を削いだりするようなことは避けなければならない。加速するグローバル化の潮流を見据えたバランスある対応が必要だ。