e保育士の子ども 預けやすく
- 2016.11.01
- 生活/生活情報
公明新聞:2016年11月1日(火)付
希望する施設に優先入所
来年4月の受け入れから
大阪市
待機児童の解消へ受け皿の整備とともに、不足する保育士の確保が大きな課題となっている。そんな中、大阪市はこのほど、市内の保育施設で働く保育士の子どもを最優先で預かる制度の導入を決めた。市によると「全国的にも数が少なく、関西ではおそらく初の取り組み」だという。
待機児童解消の担い手確保へ
新たな制度の対象となるのは、市内の認可保育施設に勤務もしくは勤務予定の保育士で、「月20日以上かつ週30時間以上」の労働日数・時間などが条件。来年4月の入所申請から適用される。通常は保育の必要性に応じて算出される利用調整基準の点数の高い世帯から順に入所となるが、こうした基準とは関係なく、保育士の子どもは希望する保育施設に最優先で入所できる。
大阪市の待機児童は、2013年度から減少傾向にあったが、今年度は増加に転じ、273人(4月1日現在)と前年度比で56人増に。また、預け先を確保できずに育児休業を延長するなど、いわゆる「隠れ待機児童」も2597人(同)に上る。市は毎年、認可保育所や認定こども園など保育の受け皿整備を進めているが、「保育ニーズの増加に整備が追い付かない」(市こども青少年局)のが現状だ。
一方、今年4月に市が実施したアンケート調査では回答のあった約200の施設のうち、保育士不足を理由に子どもを受け入れられない施設が約3割あった。「受け皿だけあっても待機児童の解消は厳しい。保育を担う人材確保へあらゆる手を打たないといけない」。赤本勇・市保育企画課長は「優先入所」の実施に踏み切った理由をこう説明する。市は、今回の新制度により、数十人の保育士確保を見込んでおり、赤本課長は「その3、4倍の数の乳幼児を新たに受け入れることができる」と、待機児童解消の担い手を確保する"即効薬"として期待を寄せる。
「もう、この仕事を辞めようかと悩んでいたんです」。こう打ち明けるのは、西区在住の井川祥子さん(仮名=44歳)。保育士歴20年のベテランで、夫と共に4歳と2歳の子育てに奮闘する傍ら、今年4月に育休から復帰。市内の公立保育所で勤務している。
しかし、今年4月の時点では2人とも区内の認可保育所に預けることができなかった。子育て世帯が多い同区は"激戦区"の一つで、夫婦共にフルタイムで働き、利用調整基準が比較的高い点数でも入所は容易ではない。このため、週2日は区外の一時保育を利用。ただ、一時保育は利用料も高い上、「肉体的にも限界を感じていた」という。
国、市の公明議員が連携して推進
こうした保育士の実情を聞いた公明党の則清ナヲミ市議は、山本香苗参院議員に相談。国では未就学児を持つ潜在保育士について、子どもを保育所に優先的に入所させる一方、未就学児の保育料を一部貸し付けする制度があったことから、則清市議は今年5月の市議会教育こども委員会で、優先入所を含む国のプランを活用すべきだと提案。その結果、保育料の貸し付けに必要な事業費については、市の今年度9月補正予算に反映された。
井川さんは、今回の制度について「保育士は大変だけど大好きな仕事。だから本当にありがたい」と安堵の表情を浮かべていた。