eISSと日本の役割 国際協力の成果、今後に生かせ
- 2016.11.02
- 情勢/解説
公明新聞:2016年11月2日(水)付
国際宇宙ステーション(ISS)に約4カ月間滞在した宇宙飛行士の大西卓哉さんが先月30日、ロシアのソユーズ宇宙船で中央アジア・カザフスタンの平原地帯に着陸した。
大西さんは開口一番、「空気がおいしい。(持っている)小さなタイマーさえ重い」と地上の感想を語った。無重力状態で、空気が循環されたISS内との違いをまざまざと感じさせられる一言だ。
大西さんは、ISSにある日本の実験棟「きぼう」で、世界初のマウス飼育実験など多くの科学研究・実験に携わった。米無人補給機「シグナス」をロボットアームで捉えてISSにドッキングさせるという難しい任務もこなした。無事に大役を果たしたことをたたえると同時に、「成果を早く皆さんに伝えたい」と話す大西さんの今後の活躍に注目したい。
宇宙を身近にした活動も大西さんの功績の一つだ。「宇宙で紙飛行機はどう動くか」「毛細管はどうなるのか」など、アジア各国の学生や科学者が提案した宇宙実験を行った。提案したメンバーが宇宙中継を通じ、実験に立ち会う機会を持てたことは意義深い。
日本はアジアで唯一、ISSに参加する国だ。今後もアジアの国々に代わって宇宙での実験や研究を重ね、その成果を地上で生かせるようにすべきだ。引き続き各国と連携を深めていけば、日本の役割はさらに高まるだろう。
大西さんが活躍したISSは現在、日本や米国、ロシアなど15カ国で運用している。日米ロなどは2024年まで運用することで合意しているが、その後どうしていくかが課題となっている。
ISSは、宇宙空間を利用した実験・研究によって科学分野はもちろん、医療や産業などの面でも成果を挙げてきた。ISSは設計上28年まで使用可能とされるが、それに代わる国際的な宇宙開発拠点を含め、検討が必要な段階に入ろうとしている。
こうした中で来年、米ロや中国など各国の閣僚級が今後の宇宙開発を話し合う「第2回国際宇宙探査フォーラム」が東京で開かれる。ISSによる国際協力の成果を将来に生かすためにも、日本が議論を主導してもらいたい。