e若年性認知症支援 進むコーディネーターの配置

  • 2016.11.04
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年11月4日(金)付



就労、医療、福祉のつなぎ役
「働き続けたい」を後押し
東京都



65歳未満で発症する若年性認知症。国は今年度から2年間で、患者や家族を支援する専門のコーディネーターを、全都道府県に配置する。全国に先駆けて活動を始めた東京都の取り組みを紹介するとともに、同症に詳しい東京医科歯科大学の朝田隆特任教授に話を聞いた。

「若年性認知症の人は、早期退職に追い込まれることが多く、働き手を失った家族は経済的に大きな負担を強いられる」。こう話すのは、東京都のコーディネーターを務める駒井由起子さんだ。都若年性認知症総合支援センター(目黒区)のセンター長として、2012年の開設当初から患者らの相談に応じてきた。

その経験から、駒井さんは「患者や雇用主が、病状や支援制度を十分理解していないこともある」と指摘する。実際、働けるのに退職を余儀なくされたり、医療機関を受診せずに病状が悪化するケースもあるという。

これまでに駒井さんが対応した中で、就労継続に結び付いた一人に、都内在住の50代男性がいる。この男性は、職場で一般事務の業務を担っていたが、発症してからは書類の作成などが困難な状態となった。相談を受けた駒井さんは、男性の勤務先へ赴き、仕事内容を確認。男性の上司らと相談し、できる範囲での業務内容に切り替えてもらうようにした。駒井さんは「対応は一人一人異なる。それぞれに合った支援を心掛けている」と語る。

コーディネーターは、こうした就労継続支援や医療機関の紹介のほか、傷病手当金や障害年金の申請など、各種社会保障制度の手続きに関する助言も行う。また、症状が進んで働けなくなった場合は、同症患者向けのデイサービスの利用などを勧める。その後は、地域包括支援センターに引き継ぐ。

都の総合支援センターには、作業療法士の資格を持つ駒井さんのほか、社会福祉士が2人いる。14年は年間2000件超の相談があり、コーディネーター1人当たり約100人を支援した。駒井さんは「働き続けたいと考える患者らを後押ししていきたい」と話す。


都議会公明党が強力に推進

政府は昨年1月、公明党の提言を盛り込んだ認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)を策定。若年性認知症への対策も強化し、専門コーディネーターがいる相談窓口の整備に取り組む。人件費を補助する国の制度を利用し、今年度中に23都府県がコーディネーターを配置する。

都の総合支援センターについては、都議会公明党(東村邦浩幹事長)が設置を強力に推進してきた。患者らが身近な地域で必要な支援を受けられるよう、多摩地域への設置と自治体職員のスキルアップも主張。これを受け、都は今年度、職員向けの相談支援マニュアルを作成。また、11月中に都内2カ所目となるセンターを日野市に開設する。


社会への理解広げて


東京医科歯科大学 朝田隆特任教授

私も加わった厚生労働省の調査で、若年性認知症の基礎疾患は、脳血管性認知症が最多だった。つまり、高齢者の認知症と違って、若年性は遺伝的な影響も大きいと考えられる。

現役世代で発症する若年性認知症は、高齢者に比べて支援の仕組みが少ない。特に、就労が大きな問題となるため、仕事継続への支援策が欠かせない。早期退職になった場合でも、福祉的就労につなげるなど、少しでも収入を得られる仕組みづくりが必要になる。

その中で、国が配置を進めるコーディネーターは、患者や家族にとって頼りになる存在だ。また、同じ病気を持った人同士が集う患者会や家族会は、当事者の励みになる。全国にネットワークのある公明党には、若年性認知症に対する社会の理解を広げてほしい。


若年性認知症
18~64歳で発症する認知症の総称。厚生労働省によると、全国の患者数は推計約3万8000人。発症年齢は平均51歳とされ、働き盛りの人が大事な会議を忘れるなど業務に支障が出て失職することもある。国の無料電話相談(電0800.100.2707)に寄せられた相談は、15年度は過去最多の計2240件に上り、5年前に比べて倍増している。

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