e外国人技能実習生 途上国の人材育成の理念忘れるな

  • 2016.11.04
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年11月4日(金)付



新興国や途上国の外国人を日本国内に受け入れ、企業などで一定期間働きながら、専門的な技術や知識を習得してもらう外国人技能実習制度。途上国の発展を担う人材を育成する国際貢献の一環として、1993年から始まった制度だが、同制度を通じて日本に来た外国人の実習生が劣悪な労働環境に置かれるケースが目立つようになり、深刻な問題となっている。

フィリピンから来日した実習生が、1カ月に100時間を超える時間外労働を強いられ、2014年4月に過労死し、今年8月に労災認定されたということまであった。

そこで、実習生を保護するための制度を適正化する法案を、厚生労働省と法務省が今臨時国会に提出。同法案は先月25日の衆院本会議で、自民、公明、民進など各党の賛成多数によって可決した。

米国務省がまとめた16年の人身取引に関する報告書は、日本で働く実習生の中には、強制労働に近い状態に置かれている者もいると指摘しており、この状況を放置しておくわけにはいかない。実習生の労働環境の改善は待ったなしであり、法案の今臨時国会での成立をめざしてほしい。

法務省によると、技能実習制度を活用して来日した後、失踪した外国人は昨年、過去最多の5803人に及んだという。統計を始めた11年の失踪者数は1534人だったが年々増加し、5年間で約4倍となっている。

背景に、実習生が「安価な労働力」として扱われている実態がある。

厚労省によると、昨年、実習生を受け入れている5173の事業所のうち、3695の事業所が、賃金の不払いや長時間労働の強制などの労働基準法違反をしていたという。違反事業所が7割を超えるという異常な多さだ。

今臨時国会で成立がめざされている法案では、実習生を受け入れる企業を抜き打ちで検査できる「外国人技能実習機構」という監督組織を新設し、実習生に日本人と同等以上の待遇も求める。

同法案は、第3条で実習生を労働力とみなしてはいけないとしている。途上国の発展に資するという理念に基づく国際貢献であるということを忘れてはならない。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ