e世界津波の日 「まず避難」の教訓共有したい

  • 2016.11.07
  • 情勢/解説

公明新聞:2016年11月5日(土)付



「全てを一瞬で奪われてしまった......」。東日本大震災の津波被災者が悲しみに立ち尽くす姿は今もって忘れることはできない。

人や街を容赦なくのみ込んでいく津波。歴史上、その脅威を幾度となく経験してきた日本こそ、津波被害を少しでも食い止める取り組みの先頭に立たなければならない。

きょう11月5日、国連の「世界津波の日」を初めて迎えた。安政南海地震(1854年11月5日)で津波が発生した際、稲束の火を目印に住民が避難した"稲むらの火"の逸話に由来する。昨年12月に日本を含む142カ国が制定決議案を共同提案し、共通記念日に採択された。

わが国は、昨年3月の国連防災世界会議で制定を訴えて以来、政府関係者や国会議員が各国大使館などに実現を働き掛け、安倍晋三首相も外遊時に各国首脳から支持を取り付けていた。津波被害に見舞われてきた日本の外交成果として評価したい。

この日に前後して、日本各地をはじめ米国やインドネシアなどで啓発イベントや避難訓練が行われる。単なる記念日に終わらせない取り組みは重要であり、とりわけ胸に刻むべきは東日本大震災で学んだ「一刻も早く避難する」との教訓であろう。1分1秒の差が生死を分けるからだ。

今月25、26日には、高知県で30カ国の高校生が一堂に会する「高校生サミット」が開かれ、地震や津波の脅威に備えるべき視点などをテーマに議論が交わされる。若い世代への防災教育の活発化は、教訓伝承の面でも意義深い。

記念日制定の国連決議では、津波被害の回避に向けて地球規模の警戒システムの必要性が指摘された。防災戦略を議論する「世界防災フォーラム」が仙台市で来年開催されることになっており、国際的な津波対策の進展に向けた議論を加速させたい。

防災に貢献する人材育成も一段と進めなければならない。政府は昨年から、地震や津波の被害が多い南米チリと共同で防災専門家の育成に乗り出している。津波に限らず近年の自然災害は、想定外の規模で発生することが多い。日本の知見や経験を生かしながら、国際的な連携をさらにリードしていくべきだ。

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