eコラム「北斗七星」
- 2016.11.09
- 情勢/社会
公明新聞:2016年11月9日(水)付
「レス・プブリカ」。日本人には馴染みのない言葉だろう。それも、そのはず。古代ローマの人々が国家を指すときに使っていたらしい◆通常は「共和国」と訳され、英語のリパブリック、イタリア語のレパブリカの原語。元意を日本語で表せば「公共」という意味だ。「古代ローマ人にとっての国家とは、公共の利益のためにこそ存在するものであった」(塩野七生著『痛快!ローマ学』集英社)という◆いよいよ、米大統領選の投票が日本時間8日夜、米東部から始まった。「パクス・ロマーナ」(ローマによる平和)と評された古代ローマ帝国と比肩はできないが、安全保障から世界経済まで最も影響力を持つ国家だけに、「公共の利益」は一国内だけにとどまるまい。その推進軸が決まるのだ◆大勢はきょうの夕方までに判明すると聞く。女性初の大統領を狙うクリントン氏か、過激な発言を繰り返しつつ猛追するトランプ氏か。異例ずくめの展開に「自分が投票するわけでもないのに、こんなにドキドキする選挙は、記憶にない」(日経)のも頷ける◆先週末、市場ではトランプ氏勝利によるリスク(危機)回避へ、世界の投資マネーが金や日本円など安全資産に流入。週が明けると、ニューヨーク市場では回避姿勢が後退。円が売られた。レス・プブリカへの影響はどうなるか。分岐点が近づいている。(田)