e退職シニア 地域で働きやすく
- 2016.11.09
- 生活/生活情報
公明新聞:2016年11月9日(水)付
送迎運転手、品出し要員、調理補助...
多彩な就労機会を開拓
「生きがい」感じ、企業にも利点
千葉・柏市のシルバー人材センターを訪ねて
会社を定年退職した後も働く意欲を持った高齢者は少なくない。現役引退後の就労しやすい環境づくりが急がれる中、シルバー人材センターの役割に改めて注目が集まっている。シニア世代の「生きがい就労」に取り組む千葉県柏市の同センターを訪ねた。
「仕事のおかげで生活にリズムができた。1週間たつのが早い」と語るのは花尾芳雄さん(65)。
花尾さんは柏市シルバー人材センターから派遣され、高齢者施設でのデイサービス利用者の送迎運転手を務めている。送迎は朝・夕の2回で、それぞれ1時間程度かかる。空いた昼間の時間は、趣味のゴルフなどを楽しんでいる。報酬は月4万円程度だ。
花尾さんは昨年7月まで都内の会社で総務職として働き定年を迎えたが、「退職後は家に居るよりも外で何かしたい」との思いから、同センターに登録した。
送迎用の福祉車両の運転は初めてだったものの、同センターが主催する運転者講習会を受け、必要な知識や技能を学ぶことができた。施設側も「人手不足で、職員が送迎まで担当すると負担が大きかった。花尾さんが働いてくれて、とてもありがたい」と話す。
シルバー人材センターの仕事といえば、「公園の草刈り」「駐輪場の管理」など、軽作業を請け負うイメージが一般的である。
しかし、柏市の同センターは、専門の「ジョブコーディネーター」を配置し、高齢者が働ける派遣業務などを開拓し、登録会員の高齢者と積極的に結び付けているのが、大きな特徴だ。
実際、その仕事内容は送迎運転手をはじめ、スーパーの品出し要員や病院での調理補助、コンビニの宅配などと多彩で、活躍するシニアは多い。人手不足に悩む企業にとっても、高齢者の就労は利点がある。
ジョブコーディネーターの籔由紀子さんは「センターに会員登録してもらう際には、過去の経歴や特技、性格などを把握し、職業紹介に生かせるよう工夫している」と説明する。
その背景には、柏市から都内などに通勤していた高齢者が定年を迎え、地域社会に活躍の場を求めるケースが増えている事情がある。このため同市は、東京大学などと連携し、地域の課題解決に向け高齢者に活躍してもらう「生きがい就労」を推進しており、その中核としてシルバー人材センターを位置付けてきた。
他の自治体でも、シルバー人材センターに増え続ける空き家の管理業務を依頼したり、保育や介護のスタッフとして働いてもらう取り組みが進められており、地域の担い手としての期待は高まっている。
公明も推進 国、助成金や支援窓口 充実へ
現在、65歳までの雇用確保措置が法的に義務付けられているが、内閣府によれば65歳を超えても働く意向を示す高齢者は約7割にも上る。しかし、総務省の労働力調査(2014年)では65歳以上就業率は20.8%にとどまっており、ミスマッチ(ずれ)が生じている。
シルバー人材センターの機能の充実を含め、退職シニアの相談体制の充実や雇用の受け皿の拡大が求められており、公明党も積極的に政府の対応を後押ししている。
例えば、今年度からシルバー人材センターで働く一部の人の労働時間の上限を、地域の事情などに応じて、従来の「週20時間」から「週40時間」にまで緩和し、より柔軟に働けるようにしている。
今年度第2次補正予算にも、高齢者雇用を後押しする施策が盛り込まれている。「65歳超雇用推進助成金」で、定年を66歳以上に引き上げる企業などに対して60万~120万円を支給する仕組みだ。
また、来年度予算の概算要求でも、厚生労働省は、ハローワーク内に設けられた高齢求職者の支援に取り組む「生涯現役支援窓口」を全国80カ所から110カ所に拡大する方針を示している。